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紅麹問題を食品科学者が解説:機能性表示食品の安全基準はどう変わったか【2026年最新・プベルル酸・GMP義務化】

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紅麹問題を食品科学者が解説:機能性表示食品の安全基準はどう変わったか【2026年最新・プベルル酸・GMP義務化】

2024年3月、小林製薬の紅麹サプリメントを原因とする健康被害が報告され、日本の食品安全行政に大きな衝撃を与えました。報告された死亡症例は408名、入院症例は558名(2025年3月時点)に達し、「機能性表示食品は安全なのか」という国民的な疑問が浮かびあがりました。

私は食品化学の研究者として、食品添加物の安全性評価と食品表示制度を学習してきました。本記事では、紅麹問題の原因物質「プベルル酸」の科学的な実態、機能性表示食品制度の問題点、そして2024年9月に施行された制度改正の内容を、消費者の視点からわかりやすく解説します。

何が起きたか:紅麹問題の経緯と被害規模

2024年3月22日に小林製薬が記者会見を開き、同社の紅麹サプリメントで入院等の健康被害が発生したことから関連3製品に自主回収のお知らせを発表した。健康被害の医師からの第一報は1月15日にあったにもかかわらず自主回収まで2カ月以上かかったことも問題になった

2025年3月16日時点での被害報告は、死亡症例408名、入院症例558名に上っており、主な症状は尿の泡立ち・混濁、倦怠感、腹痛、腰痛、食欲不振、腎機能数値の異常などであることが報告されています。これは日本の健康食品・サプリメントに関連する事件としては戦後最大規模の健康被害となりました。

入院症例数(2025年3月時点)
558名
死亡症例408名を含む
第一報から自主回収まで
2ヶ月超
1月15日→3月22日(公表)
制度改正施行日
2024年
9月1日
GMP義務化・健康被害報告義務化

回収対象となったのは「紅麹コレステヘルプ」「ナットウキナーゼさらさら粒ゴールド」「ナイシヘルプ+コレステロール」の3製品です。これらはいずれも機能性表示食品として届け出が受理され、「コレステロールを下げる」「血液サラサラ」などの機能性を謳って販売されていました。

原因物質プベルル酸とは何か:食品科学者が解説

長期にわたる調査の結果、健康被害の主な原因物質として「プベルル酸」が特定されました。

健康被害が多く報告されている製品の原料ロットに、プベルル酸のほか2つの化合物(C28H42O8、C23H34O7)が含まれていた。工場内の青カビ(Penicillium adametzioides)が、培養段階で混入し、コメ培地を栄養源としてプベルル酸を産生したと推定されている

食品科学者として解説すると、プベルル酸(Puberulic acid)はペニシリウム属の青カビが産生する有機酸の一種です。通常の紅麹菌(Monascus purpureus)には含まれない物質で、製造工程でのコンタミネーション(異種微生物の混入)によって生成されたものです。

食品科学者が解説:コンタミネーションはなぜ起きたか

  • 紅麹菌の発酵培養は長期間(通常より3倍以上)にわたっていた。発酵期間が長くなると外来微生物が混入・増殖するリスクが高まる
  • 使用タンクの老朽化が混入リスクを高めた可能性が指摘されている
  • 製造工程でのGMP(医薬品製造管理基準に相当する品質管理)が義務化されていなかったため、品質管理の水準がメーカー任せになっていた
  • 機能性表示食品は「届出制」であり、消費者庁が製品の安全性を審査・承認する制度ではないため、製造段階でのリスクが見えにくかった

機能性表示食品制度の「穴」:なぜ見逃されたのか

今回の問題を理解するには、「機能性表示食品」とはどういう制度なのかを正確に知ることが重要です。

機能性表示食品は2015年に安倍政権下で導入された制度で、事業者が一定の科学的根拠に基づいて健康への機能性を「届け出る」制度です。特定保健用食品(トクホ)が消費者庁の審査・承認を受けるのに対し、機能性表示食品は事業者の自己責任で届け出れば販売できる、審査不要の簡易な制度です。この制度の導入は、多くの食品メーカーが健康機能を訴求しやすくなったという経済的なメリットをもたらした一方で、消費者保護の観点での整備が追いついていませんでした。

この「届出制」という設計が、今回の問題の背景となりました。事業者が届け出た機能性は科学的根拠が必要ですが、製造工程の安全性や品質管理についての審査は行われませんでした。また、健康被害が発生した際の報告義務も明確でなく、今回のケースでは第一報から公表まで2ヶ月以上かかりました。

さらに、今回の問題では「天然由来の原材料だから安全」という消費者・事業者双方の思い込みも一因として指摘されています。紅麹は伝統的な発酵食品由来であり、「天然=安全」というイメージが製造管理への注意を薄める方向に働いた可能性があります。食品科学者として繰り返し強調したいのは、発酵プロセスは生物が関与するため製造管理の難易度が高く、品質管理の体制が不十分だと予期しない有害物質が産生されるリスクがあるという点です。

2024年9月施行の制度改正:何が変わったか

2024年3月に紅麹製品の健康被害を受けて、国は制度の見直しを進めて関連法令(消費者庁・食品表示法の食品表示基準、厚生労働省・食品衛生法の施行規則)を改正し、9月1日に施行した。改正ポイントは機能性表示食品等の「健康被害の情報提供の義務化」「サプリメント形状食品のGMPの要件化」「表示内容の改正」など多岐にわたる

改正項目 改正前 改正後(2024年9月〜)
健康被害報告 任意・義務なし 義務化。消費者庁への報告が必須
GMP(品質管理) 任意・メーカー任せ サプリメント形状の機能性表示食品・トクホに義務化
表示内容 機能性の表示のみ 「疾病の診断・治療・予防を目的とするものでない」等の注意文言の強化
制度の審査 届出制(審査なし) 届出制のまま(抜本的な審査制への変更は見送り)

食品科学者として評価すると、GMP義務化と健康被害報告の義務化は重要な前進です。しかし機能性表示食品の「届出制」という根本的な枠組みは維持されており、機能性の科学的根拠の審査が引き続き事業者の自己責任に委ねられている点は変わっていません。今後の消費者保護の観点からは、機能性の根拠審査の強化が課題として残っています。

消費者が今すぐできる安全なサプリの選び方

① 「機能性表示食品」と「トクホ」の違いを理解する

特定保健用食品(トクホ)は消費者庁が製品ごとに審査・承認を行い、有効性・安全性が個別に確認された食品です。機能性表示食品は事業者の届出制で、審査は行われません。成分の安全性について最も審査が厳格なのはトクホであることを覚えておきましょう。

② GMP認定工場製造の製品を選ぶ

今回の改正でサプリメント形状の機能性表示食品にGMPが義務化されましたが、移行期間があります。製品パッケージや製造元のウェブサイトで「GMP認定工場で製造」と明記されているものを選ぶことが現時点での最も信頼できる指標です。

③ 大手メーカー・長年の製造実績を確認する

製造管理の品質は、製造実績が長く、大規模な品質管理体制を持つメーカーほど安定している傾向があります。価格が安く、製造元が不明瞭なサプリメントは品質管理のリスクが高い可能性があります。

④ 「天然由来=安全」という思い込みを捨てる

今回の問題で明らかになったのは「天然由来の発酵食品であっても、製造工程の管理が不十分であれば有害物質が生成されるリスクがある」という事実です。「天然由来だから安全」という前提は成り立ちません。

⑤ 体調の変化があればすぐに使用を中止し医師へ

サプリメントを摂取中に尿の変色・倦怠感・腹痛・むくみなどの症状が現れた場合は、服用を直ちに中止し医師に相談してください。今回の紅麹被害も早期に使用を中止した方の多くは症状が改善しています。

まとめ

この記事のまとめ

  • 小林製薬の紅麹サプリ問題は、製造工程での青カビ(Penicillium adametzioides)混入によるプベルル酸の産生が原因とほぼ確定
  • 2025年3月時点での被害は死亡症例408名・入院558名と、日本の健康食品史上最大規模
  • 問題の背景には「届出制」で審査不要な機能性表示食品制度と、GMPが義務でなかったことがある
  • 2024年9月施行の改正で「健康被害報告の義務化」「GMP義務化」が実現。しかし届出制・機能性根拠の自己責任という枠組みは維持
  • 消費者の対策として「GMP認定工場製造品を選ぶ」「天然由来でも安全とは限らない」「体調変化があれば即中止・受診」の3点が重要
  • 機能性表示食品はトクホより審査が緩い制度であることを理解した上で、購入を判断することが必要

紅麹問題は「健康を守るためのサプリメントが健康を害した」という痛ましい事件でした。この教訓を活かし、「機能性表示食品とは何か」「制度の限界はどこか」を理解することが、消費者として身を守る最大の武器になります。また、今回の問題は製造管理の問題であり、紅麹そのものや発酵食品全般を否定するものではありません。冷静に事実を把握した上で、適切な情報に基づいた選択を続けることが大切です。本サイトでは機能性表示食品・サプリメントの成分解説記事も掲載していますので、あわせてご覧ください。紅麹問題やサプリメントの安全性についてご質問があれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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監修・執筆:azu(食品化学研究者)

農学部卒業後、大学院にて酵素研究を専攻(修士課程修了)。現在は食品メーカーにて研究職として勤務。保有資格:食品衛生管理者・毒物劇物取扱責任者・甲種危険物取扱者・食生活アドバイザー3級。

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