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赤色3号(エリスロシン)が米国で禁止に。日本では?食品科学者がデータで解説【2025年最新】
2025年1月15日、米国食品医薬品局(FDA)が食用赤色3号(エリスロシン)の食品・経口医薬品への使用許可を取り消すと発表しました。この報道は日本国内でも「米国で発がん性で禁止に!日本のお菓子や漬物は大丈夫?」として大きく話題になりました。
私は食品化学の研究者として、食品添加物を研究してきました。本記事では、FDAがなぜ赤色3号を禁止したのか、その科学的な根拠と法律的な背景、そして日本での現在の対応と実際の安全性について、データをもとに正確に解説します。
結論を先にお伝えすると、「今回のFDA禁止措置は安全性の問題ではなく、米国特有の法律(デラニー条項)に基づく法的整合性の問題であり、日本人の通常の摂取量ではリスクは極めて低い」というのが食品科学者としての見解です。
赤色3号(エリスロシン)とは?どんな食品に入っている?
赤色3号(化学名:エリスロシン)は、石油などを原料に化学合成された食用タール色素の一種です。鮮やかな桃色〜赤色を発色し、タンパク質となじみがよく耐熱性にも優れるため、幅広い食品に使用されてきました。食品表示では「赤色3号」または「着色料(赤3)」と記載されます。
1月15日
(審議中)
赤色3号が使われている主な食品には、かまぼこ・なると・漬物(福神漬けなど)・お菓子(飴・ゼリー・ケーキ)・缶詰(さくらんぼ)・アイスクリームなどがあります。日常的に口にする機会がある着色料ですが、使用量は製品全体の重量に比べて非常に少量です。
FDAが禁止した本当の理由:発がん性ではなく「法律問題」
今回のFDA禁止措置を正確に理解するうえで欠かせないのが、「デラニー条項」という米国特有の法律の存在です。
デラニー条項とは、1958年に米国の連邦食品・医薬品・化粧品法(FD&C法)に追加された条項で、「ヒトまたは動物においてがんを引き起こすことが確認された化学物質は、食品添加物として認められない」と定めています。重要なのは、「たとえ動物実験が高濃度・過酷な条件下で実施されたものであっても、がんの発生が確認されれば禁止」という極めて厳格なルールである点です。
食品科学者が解説:FDAの発表を正確に読む
- FDAは禁止発表と同時に「食品や経口薬に赤色3号を使用すると人々に危険が及ぶという主張は、入手可能な科学的情報によって裏付けられていない」とも明言している
- つまり今回の禁止は「安全性の懸念」ではなく「法律上の整合性をとる措置」である
- FDAは1990年代から法的矛盾を認識していたが、安全性に問題がないとして対応を保留。2022年にNGOから法的圧力をかけられ、2025年に対応した経緯がある
- 日本食品添加物協会もこの点を公式に確認している
メディアの見出しにある「発がん性で禁止」という表現は、FDAの発表の一側面のみを切り取ったものです。FDA自身が「安全性の問題ではない」と述べている事実を踏まえた上で、情報を判断することが重要です。
発がん性の科学的根拠:ラット実験をどう読むべきか
FDA禁止の発端となった動物実験について、食品科学者として正確に解説します。
ペンシルバニア大学の研究(1990年)では、雄ラットに高濃度のエリスロシンを慢性的に摂取させたところ、甲状腺腫瘍の形成が促進されたと報告されました。そのメカニズムは、エリスロシンが甲状腺ホルモン(チロキシン)の産生を阻害し、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の慢性的な過剰分泌を引き起こすことで腫瘍が誘発されるというものです。
しかしこの反応は、ラット特有のホルモン調節メカニズムによるものであり、ヒトでは同様のメカニズムが発動しにくいことが科学的に確認されています。FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)も「低い食事曝露レベルでヒトに甲状腺腫瘍を発症する可能性は低い」と結論づけています。
さらに、実験で使われた用量は、ヒトが食品から実際に摂取する量と比べて極めて高い水準でした。日本の厚生労働省によるマーケットバスケット調査では、日本人の赤色3号の一日推定摂取量はADI(一日許容摂取量)のわずか0.02%程度と確認されており、実験条件とは大きくかけ離れています。日本の安全対策調査会もこの点を踏まえ、「ラット試験での発がんが認められた用量は、医薬品・食品の服用・摂取でヒトが取り込む量と比べて極めて高用量であり、使用を禁止する必要はない」との見解を示しています。
世界各国の規制比較:EU・日本・米国の違い
赤色3号の規制状況は国によって大きく異なります。
| 地域・機関 | 食品への使用 | 備考 |
|---|---|---|
| 米国(FDA) | 2027年1月から禁止 | デラニー条項による法的整合性の措置 |
| EU | 加工チェリーのみ許可 | ほぼ全食品で使用禁止。E127として管理 |
| 日本 | 現在も使用許可 | 消費者庁が動向を踏まえて検討中 |
| ドイツ・ポーランド | 禁止 | EU規制に先行して独自禁止 |
| JECFA(国際機関) | ADI設定あり・許可 | ヒトへの甲状腺腫瘍リスクは低いと結論 |
規制が国ごとに異なる理由は、各国の食品安全に関する法律体系と評価基準が異なるためです。「米国・EUで禁止=日本の基準が甘い」という単純な図式ではなく、それぞれの国が独自の科学的評価と法律的枠組みの中で判断していることを理解することが重要です。
日本の対応と摂取量データ:消費者庁・厚労省の見解
FDA禁止発表を受けて、日本の規制当局はどう対応したのでしょうか。
消費者庁は2025年1月の時点で「諸外国における動向を踏まえ、科学的な見地から使用について検討する」としつつも、「現時点で直ちに食用赤色3号の指定を取り消す又は使用基準を改正する必要はない」との判断を示しました。この判断の根拠となっているのが、厚生労働省による摂取量調査のデータです。
マーケットバスケット方式(実際の市販食品を購入・分析する調査手法)による調査では、日本人の赤色3号の一日推定摂取量はADIのわずか約0.02%程度と判明しています。ADIの1%にも満たないこの水準は、安全上の懸念が極めて低いことを示しています。
医薬品に関しては2025年4月に厚労省が製造販売業者に自主点検を求める通知を発出しており、一部の医薬品でADIを超える量の赤色3号が含まれていたケースが確認されたと報告されています。食品と医薬品とで対応のスピードに差があるのは、こうした摂取量データの違いによるものです。
気になる方への実践的なアドバイス
赤色3号が心配な方に向けて、現実的な対応策をお伝えします。
成分表示で「赤色3号」「着色料(赤3)」を確認する
食品の原材料名欄に「赤色3号」または「着色料(赤3)」と記載されていれば赤色3号が使用されています。特に漬物・かまぼこ・飴・ゼリー・缶詰のサクランボ類は使用頻度が高い食品です。気になる場合は別の商品を選ぶことで簡単に回避できます。
子どもの食品は特に確認を
子ども向けのお菓子・飴・ゼリーには合成着色料が使われているケースがあります。赤色3号に限らず、合成着色料全般が気になる場合は原材料名欄を確認し、天然色素(クチナシ色素・アカビート色素など)を使用した製品を選ぶ方法もあります。
過剰な不安は不要、ただし情報は継続的に確認する
現時点での日本の科学的評価と摂取量データに基づけば、日常的な摂取量での健康リスクは極めて低いといえます。ただし、消費者庁が今後の動向を踏まえて判断を見直す可能性があるため、本サイトを含む信頼できる情報源で最新情報をフォローすることをお勧めします。
まとめ
赤色3号のFDA禁止報道について、食品科学者の視点からデータと背景を整理しました。
この記事のまとめ
- FDAの赤色3号禁止(2025年1月)は「安全性の問題」ではなく「デラニー条項という米国特有の法律への対応」である
- FDA自身が「使用が人々に危険をもたらすという主張は科学的情報で裏付けられていない」と明言している
- 発がん性の根拠となったラット実験のメカニズムはヒトには起こりにくく、JECFAも「ヒトへのリスクは低い」と結論している
- 日本人の赤色3号摂取量はADIの約0.02%で、安全上の懸念は極めて低い水準
- 消費者庁・厚労省は「現時点で規制変更の必要はない」との立場だが、今後の動向は注視が必要
- 気になる方は成分表示で「赤色3号」「着色料(赤3)」を確認し、天然色素使用製品を選ぶ方法がある
食品添加物に関するニュースは「禁止」「危険」という言葉が一人歩きしやすい分野です。情報の出所と科学的根拠を確認する習慣が、冷静な食品選びの第一歩になります。本サイトでは今後も国内外の規制動向を科学的根拠とともに随時解説していきます。気になる添加物・規制情報・食品表示についてご質問があれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。正確な情報をもとに、安心できる食選びを一緒に実現していきましょう。
監修・執筆:azu(食品化学研究者)
農学部卒業後、大学院にて酵素研究を専攻(修士課程修了)。現在は食品メーカーにて研究職として勤務。保有資格:食品衛生管理者・毒物劇物取扱責任者・甲種危険物取扱者・食生活アドバイザー3級。