柑橘類には甘さの他に、苦味や刺激感を感じることがありますよね。
実は柑橘類に含まれるナリンジン(ナリンギン)という物質が原因であり、こちらは苦味料の食品添加物として使用されています。
本記事では、ナリンジンについて詳しく解説していきます。
ナリンジンとは?
ナリンジンとはフラボノイドの一種で、柑橘類に多く含まれる化合物です。
フラボノイドとは、ポリフェノールの一種であり、植物の葉、茎、幹などに含まれており種類は4,000以上あります。
フラボノイド類は人の体の特定の生理調節機能に働きかけるので、機能性成分として注目されています。
ナリンジンの構造は、ポリフェノール部分であるナリンゲニンという化合物と、糖が結合した配糖体の構造となっています。
ナリンジンの構造
ナリンジンの生理機能
ナリンジンは、上述したようにポリフェノールの一種であることから、様々な生理機能を有しております。
抗酸化作用:物質の酸化を抑制する働きがあり、活性酸素などの有害物質を無害な物質に変える作用があり、動脈硬化など生活習慣病の予防に役立つ可能性があります。
肥満予防:ナリンジンを摂取することで脂肪の消費量がアップすることや、コレステロールの吸収抑制作用によって、内臓脂肪が低減する可能性があります。
高血圧予防:ポリフェノールは、加齢による血管の内皮機能と運動能力の低下を遅らせる働きがあり、高血圧や動脈硬化を予防する可能性があります。
また、ナリンジンには空腹時血糖値を低下させる機能があることが報告されています。
ナリンジンを多く含む食品
ナリンジンは食品の中でも、オレンジやグレープフルーツ等の柑橘類に多く含まれますが、特に果皮の部分に多く含まれるとされています。
そのため、アメリカでは果皮からナリンジンを抽出して利用する技術が非常に発達しており、有効利用されています。
日本では、柑橘類の果皮の大部分は飼料として利用されていますが、食品への利用を進めるための研究が日々行われています。
またナリンジンは苦味を有することから、苦味料の食品添加物として利用されています。
しかし、時にその苦味が邪魔になる場合があり、例えば果汁やシロップ漬け缶詰、マーマレード等を製造するときにナリンジン由来の苦味が入り、問題となる場合があります。
その場合、ナリンジンを分解する酵素、ナリンジナーゼが苦味取りに利用されています。
ナリンジンの安全性
ナリンジンは、国内で食品添加物として使用されているおり、欧州の食品安全性を評価するEFSAにおいて、ナリンジンは香料物質の登録簿に収載されており、食品に使用する際に、使用量には特に制限が設けられていません。
また、アメリカ食品医薬品局のFDAにおいて、ナリンジンはGRAS(一般に安全と認められる食品)認定されていますので、比較的安全な物質といえます。
ナリンジンはシトクロムP450の働きを阻害する効果があるとされています。
シトクロムP450は、薬物の代謝に関係することがあり、グレープフルーツジュースと薬を一緒に飲んではいけない理由が、グレープフルーツに含まれるナリンジンが薬の代謝を阻害し、副作用が発生する可能性があるためです。
ですので、薬を飲む際はナリンジンを摂取しない方が良いでしょう。