Contents
市販の食パンに入っている添加物を全部調べた:ヤマザキ・Pasco・フジパンを食品科学者が成分比較【2026年最新】
「ヤマザキのパンは添加物が多いと聞いた」「Pasco超熟は本当に無添加なの?」「イーストフード不使用と書いてあっても信用できる?」——食パンの添加物への疑問は、食品カテゴリーの中でも特に検索数が多いテーマです。
私は食品化学の研究者として、食品添加物と食品表示を学んできました。本記事では、大手パンメーカーの食パン各製品の成分表示を実際に調べ、イーストフード・乳化剤・臭素酸カリウムなどの添加物の科学的な実態と、「無添加」表示の裏に隠されたからくりを解説します。
結論を先にお伝えすると、「イーストフード・乳化剤不使用と書かれていても、機能的に同じ役割を果たす代替物質が使われているケースが多い。重要なのは表示の有無よりも、原材料全体を見る習慣を持つこと」というのが食品科学者の見解です。
食パンに使われる主な添加物とその役割
市販の食パンには主に以下の添加物が使われています。食品科学者として役割と安全性をセットで解説します。
乳化剤
フジパン 本仕込
① イーストフード(一括名称)
イーストは、自然界にある果実や穀物から分離させた菌を純粋培養した酵母で、イーストフードは、イースト菌発酵を促進するために加える添加物です。イーストフードを使えば、発酵時間を短縮でき、安定的に大量生産ができます。また、焼いた後でもパン生地を柔らかく保ち、小麦の量も少なくて済むため、安い価格で販売できます。
これらの添加物16種類を複数混ぜて使用します。複数まとめて使用すると「イーストフード」として一括表記できます。一括表記できるので、どの物質が入っているかは分かりません。食品科学者として補足すると、イーストフードの主成分である塩化アンモニウム・炭酸カルシウム・塩化マグネシウムなどはそれぞれ単独では食品・栄養素として用いられる成分も多く含まれており、通常使用量での健康リスクは現時点では極めて低いとされています。
② 乳化剤
食品表示法で「乳化剤」という一括名の表示が認められている食品添加物。食パンで主に使われるのはグリセリン脂肪酸エステルで主に植物性油脂から作られます。水と油を混ざりやすくすることができるため、生地調整剤として使用されます。ふっくらと柔らかく、老化しにくい(時間がたっても固くなりにくい)パンにできます。乳化剤は腸内環境への影響を示す動物実験の報告があるものの、ヒトでの影響は現時点では確定していません。
③ ビタミンC(アスコルビン酸)
パンに入れているビタミンCはアスコルビン酸のことです。働きはパン生地のグルテンの生成に大きな働きをして、ガス保持力を強化して、窯伸びを良くして、スダチの良いパンにします。「ビタミンC」という名前からは健康的なイメージを受けますが、パンへの添加目的は酸化防止・生地改良であり、栄養補給目的とは異なります。ただし安全性そのものへの懸念は低い成分です。
④ 加工デンプン
小麦粉に加工デンプンであるヒドロキシプロピル化デンプンを加えると、他のデンプンよりも給水が良くなり、その結果、しっとりとした食感が良くなります。加工デンプンは「でん粉」が出発原料で化学処理を加えた食品添加物です。11種類あり、一括名「加工デンプン」と表示されるため、どの種類が使われているかは原材料表示からは判別できません。
「イーストフード・乳化剤不使用」の本当の意味
食パン選びで「イーストフード・乳化剤不使用」という表示を見て安心している方に、食品科学者として知っておいてほしい重要な事実があります。
「イーストフード、乳化剤不使用」等の強調表示のある食パンや菓子パンは、イーストフードや乳化剤を添加物表示義務のない物質で代替し、表示義務は回避しているものの、イーストフードについては、タンパク質分解酵素によってパン酵母(イースト)の栄養である窒素源(アミノ酸)を生成させたり、水の硬度調整のためにカルシウム等のミネラルを含む天然物を代替使用しています。
つまり、「イーストフード不使用」と書かれていても、こうした代替物質はイーストフードと同質、同機能を有しており、実際はイーストフードを使用して製造された食パンや菓子パンと何ら差のあるものではありませんというのが山崎製パン自身の見解です。
食品科学者が解説:「不使用」表示のからくり
- イーストフード代替:酵素処理(タンパク質分解酵素など)でイーストフードと同じ機能を実現。酵素は食品添加物でも「加工助剤」として表示免除になる場合がある
- 乳化剤代替:原料油をエステル交換技術や酵素技術によって加工し、その加工過程において乳化剤であるモノグリセライドやジグリセライドを生成させたり、添加物表示義務の生じない方法で使用した乳化油脂を使用しており、実質的には乳化剤あるいは乳化油脂を使用したパンです
- 食品科学的な結論:「不使用」表示は一定の消費者ニーズに応えたマーケティング判断であり、安全性の面で「使用品」と本質的な差があるとは言えないケースが多い
この問題を最初に指摘したのは山崎製パン自身であり、ヤマザキがこの件に噛みついた。「イーストフードや乳化剤不使用とめっちゃ他のメーカーが言ってるけど、製品調べたら似たようなもん入ってるよなあ?これで『不使用』とか言っちゃうの、ええんか?」ということです。これをうけて日本パン工業会よりイーストフード・乳化剤不使用等の強調表示自粛に関する自主基準が設けられました。
大手4社の食パン添加物を徹底比較
| 銘柄 | 代表製品 | イーストF | 乳化剤 | その他の主な添加物 |
|---|---|---|---|---|
| 山崎製パン | ふんわり食パン・ダブルソフト | 使用 | 使用 | 酢酸Na・加工デンプン・糊料(キサンタン)・甘味料(ステビア)・V.C |
| Pasco(敷島製パン) | 超熟 | 不使用 | 不使用 | バター入りマーガリン・V.C(酸化防止剤) |
| フジパン | 本仕込 | 不使用 | 不使用 | ビタミンCのみ |
| 山崎製パン | ロイヤルブレッド | 不使用 | 不使用 | バター・V.C(酸化防止剤) |
Pasco超熟・フジパン本仕込みはイーストフード・乳化剤不使用で、添加物の数という点では大手製品の中で最もシンプルです。ただし前述のとおり、代替技術(酵素処理など)が使われている可能性もあります。食品科学者として確認できることは「原材料表示がシンプルである=加工助剤等の非表示成分が少ない可能性が高い」ということです。山崎製パンも「ロイヤルブレッド」はイーストフード・乳化剤不使用で設計されており、同社内でも製品によって添加物の方針が異なります。
臭素酸カリウムとは?日本のパンに使われている?
SNSで「食パンに発がん性物質の臭素酸カリウムが使われている」という情報が拡散することがあります。食品科学者として正確な情報をお伝えします。
ラットを用いた試験で発がん性が確認されたため、WHO(世界保健機関)やFAO(国連食糧農業機関)などが使用禁止を勧告。EU・米国のカリフォルニア州が使用禁止。中国でさえ2005年から使用を禁止しています。一方で日本では現在も食品添加物として認可されており、一部のパンメーカーが使用しています。
日本の大手パンメーカーでは、Pasco敷島製パンが1980年から使用禁止としています。山崎製パンも現在は自主的に不使用の方針をとっています。気になる方は、購入前に各メーカーのウェブサイトで臭素酸カリウムの使用有無を確認するか、「臭素酸カリウム不使用」と明記されている製品を選ぶことをお勧めします。
本当に添加物の少ない食パンの選び方
① 原材料の行数で選ぶ
原材料欄が短くシンプルな製品ほど加工度が低い傾向があります。「小麦粉・糖類・バター・パン酵母・食塩・V.C」程度のシンプルな表示を目指して選ぶのが基本です。
② 「不使用」表示だけに惑わされない
「イーストフード・乳化剤不使用」は、代替技術が使われている可能性があります。原材料欄全体を見て「加工デンプン・糊料・甘味料」などが多く含まれていないか確認しましょう。
③ 食パンよりも「焼きたてパン」「手作りパン」を増やす
最も添加物を減らしたい場合は、パン屋の焼きたてパンか自家製パンが最善策です。ホームベーカリーを使えば原材料を完全にコントロールでき、イーストフード・乳化剤なしでふっくらしたパンを焼けます。
④ 毎日食べるなら超熟・本仕込みを選ぶ
スーパーで買える選択肢の中では、Pasco超熟とフジパン本仕込みが原材料表示のシンプルさという観点から食品科学者として推奨できます。価格は通常品よりやや高めですが、毎日食べるものだからこそ選ぶ価値があります。
まとめ
この記事のまとめ
- 食パンの主な添加物はイーストフード(18種の一括表示)・乳化剤・ビタミンC・加工デンプンなど
- 「イーストフード・乳化剤不使用」と書かれていても、機能的に同等の代替物質(酵素処理・加工油脂等)が使われているケースがある
- この問題は山崎製パン自身が指摘し、業界団体が「強調表示の自粛基準」を設けるに至った
- 添加物が最もシンプルなのはPasco超熟・フジパン本仕込み・ヤマザキロイヤルブレッド。原材料欄がシンプルな製品を選ぶことが実践的な対策
- 臭素酸カリウムはWHOが禁止勧告。日本でも大手各社は自主的に不使用とする傾向にあるが購入前に確認を
- 最も添加物を減らしたいなら、パン屋の焼きたてかホームベーカリーでの自家製が最善
食パンの添加物を正確に理解することで「すべてのパンが危険」という過剰な不安を解消し、かつ「表示に踊らされない」賢い選択ができるようになります。本サイトでは食品ラベルの読み方・食品表示の抜け穴解説など関連記事も掲載していますので、あわせてご覧ください。
食パンの添加物についてご質問があれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。
監修・執筆:azu(食品化学研究者)
農学部卒業後、大学院にて酵素研究を専攻(修士課程修了)。現在は食品メーカーにて研究職として勤務。保有資格:食品衛生管理者・毒物劇物取扱責任者・甲種危険物取扱者・食生活アドバイザー3級。