各種食物繊維の詳細については以下の通りです。
セルロース
セルロースはグルコースがβ-1,4結合した直鎖状の多糖類です。セルロース分子の重合度は3000~10000とされており、水素結合やファンデルワールス力によって、束を作りミクロフィブリルを形成しています。セルロースは酸や消化酵素による加水分解に対し抵抗力があり、また吸水性を示すことが特徴です。セルロースの誘導体であるカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロースは水に溶けて親水性コロイド溶液を形成し、食品添加物の糊料として認可されている。
ヘミセルロース
ヘミセルロースは細胞壁を構成する多糖類のうち、セルロースとペクチン質以外のものを指します。主要な構成成分としてキシランがあり、キシロースがβ-1,4結合したもので、側鎖にL-アラビノース、D-グルクロン酸、メチルグルクロン酸が側鎖として結びついている場合が多いです。そのほかの多糖類として、マンナンがあり、マンノースがβ-1,4結合した多糖類です。マンナンの中でもグルコマンナンと呼ばれるものは、グルコースとマンノースが1:1または1:2.4の比で構成されます。ガラクトマンナンはグルコマンナンの側鎖としてガラクトースが結合したもので、グルコマンナンより可溶性であります。
ペクチン
ペクチンはD-ガラクチュロン酸がα-1,4結合した多糖類で、細胞壁中ではカルシウム塩として存在し、水に溶けにくい性質を持ちます。天然に存在するペクチンは、ポリガラクチュロン酸のカルボキシル基が部分的にメチルエステル化しており、また一部がアセチル化しています。メトキシル基が7%以上のものを高メトキシペクチンと呼ばれ、pH2.5~3.5で糖を50%以上加えると、ゼリー化する性質がある。この原理を応用した食品がジャム類であります。メトキシル基が7%以下のものを低メトキシペクチンと呼び、カルシウムイオンを添加するとゲルを形成します。
アラビアガム
アラビアガムノキから採取される樹液ガムで、ガラクタンが主鎖の構造をとっています。このガムは乳濁液に対して保護コロイドとして作用し、乳化剤としてきわめて有効であります。
トラガントガム
中南米に産するマメ科の樹から採取される樹液ガムで、その主成分はトラガント酸です。これはガラクチュロナンを内部骨格とし、食品の安定剤、乳化剤として使用されます。
カラヤガム
インドの乾燥高地帯に生育する樹から採取される樹液ガムで、糖配列が部分的にアセチル化している点が特徴的であります。緩下剤、食品、製紙、繊維工業に用途があります。
ガッティガム
インド、セイロンなどに生育する樹から採取されるガムで、ウロン酸含量の高いグルクロノマンナンです。
ローカストビーンガム
地中海沿岸の高温乾燥地帯に生育するマメ科の樹の種実であるローカストビーンの胚乳部から得られます。構造はガラクトマンナンでガラクトースとマンノースの構成比は1:3~4です。このガムは冷水にほとんど不溶で、加熱すると溶けます。カラギーナンのようなほかの粘質物と併用すると、ゼリーの弾力性が増加することから、食品の増粘剤、安定剤として広く使用されています。
グアーガム
マメ科グアーの種子胚乳部から得られ、構造はガラクトマンナンで、ローカストビーンガムとよく似ていますが、ガラクトースとマンノースの構成比は1:2であります。このガムは冷水に容易に溶け、塩類による影響はほとんどなく、広範囲のpHに安定であります。各種食品の増粘やゼリー形成に利用されています。
タマリンド種子ガム
インド地方に生育するマメ科植物タマリンドの種子胚乳部から得られます。ヨード溶液と反応して青色を呈すので、アミロイドとも呼ばれますが、アミロースとは関係がありません。構造はキシログルカンで、このガムはゼリー形成能があり、ペクチンと異なり、酸が存在しなくてもゼリーを形成します。ゼリー形成剤として食品に利用されています。
コンニャクマンナン
サトイモ科のコンニャクイモの中に含まれるコンニャク粒子がコンニャクマンナンです。この多糖類はグルコースとマンノースが直砂上に結びついたグルコマンナンです。コンニャクマンナンは水を吸収すると大きく膨潤して容積を増し、粘度の高いコロイド状を呈します。このコロイド溶液に石灰水などのアルカリを加えて加熱すると、凝固して食用コンニャクとなります。
アルギン酸
褐藻類から抽出される。D-マンヌロン酸からなる直鎖上構造、L-グルロン酸からなる直鎖上構造、D-マンヌロン酸とL-グルロン酸がβ-1,4結合で交互に結びついた直鎖上の構造が見出されています。遊離のアルギン酸は水に不要ですが、ナトリウム塩にすると水溶性になります。カルボキシル基にプロピレングリコール基を導入したアルギン酸プロピレングリコールエステルは、耐酸性で乳化剤としても優れています。
寒天
テングサ、オゴノリ、イギスなどの真正紅藻類から熱水抽出されます。アガロースとアガロペクチンからなる混合物であり、アガロースは1,3位で結合するD-ガラクトースと1,4位で結合する3,6-アンヒドロ-L-ガラクトースからなり、これら2種が交互に反復して直鎖構造をつくっています。アガロペクチンはアガロースと同じ基本構造ですが、少量の硫酸、D-グルクロン酸、ピルビン酸などの酸性基が結びついている酸性多糖類です。ゲル化にはアガロースが強く関与し、食品のゼリー化剤として広く用いられています。
カラギーナン
アイリッシュモスという紅藻類から熱水抽出で得られます。基本構造は寒天と異なり、D型のガラクトースのみの重合体で、大別してk-カラギーナン、λ-カラギーナン、ε-カラギーナンの3つの型があります。どれもガラクトース残基からなりますが、硫酸基がそれぞれ異なった度合いに結びついています。ゼリー化剤、薬品や化粧品の安定化剤、分散剤として広く用いられています。