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ハエトリシメジのうま味成分トリコロミン酸とは?

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ハエトリシメジのうま味成分トリコロミン酸とは?

ハエトリシメジというキノコに含まれるうま味成分であるトリコロミン酸についてご存知ですか?

かなり珍しい物質なのですが、実は日本人が発見した物質であり、うま味成分として古くから知られている物質です。

本記事では、そんな珍しい物質であるトリコロミン酸と、トリコロミン酸を含んでいるキノコであるハエトリシメジについて纏めてみました。

トリコロミン酸とは?

トリコロミン酸は、1964年に竹本常松さん達によってハエトリシメジから単離され命名された物質です。

ハエトリシメジは昔からの食経験によってうま味があるキノコで知られており、その研究の過程において、トリコロミン酸はうま味成分として発見されました。

味の素として知られているグルタミン酸ナトリウム(MSG)等のうま味成分と同様に、トリコロミン酸は、タンパク質の構成成分であるアミノ酸の一種なのですが、ハエに対して殺虫性を示すことが知られています。

うま味成分は、アミノ酸やアミノ酸が複数結合したペプチドがほとんどですが、他のうま味成分については、当ブログでも別記事で取り上げておりますので、よければ下記リンク先の記事を参照ください。

うま味について

ハエトリシメジとは?

ハエトリシメジとは学名Tricholoma muscariumと言い、ハラタケ目キシメジ科キシメジ属の日本特産のキノコです。

秋に主にコナラなどの広葉樹林内に生息し、傘の大きさは直径5cmほどで、淡黄色の地に暗緑色の繊維紋があり、中央がとがっていることが特徴です。

ハエトリシメジを火にあぶり水に浸すことで、ハエを誘い出し殺虫することが出来るため、昔からハエ取りに利用されていました。

つまり、上記のハエを取るという特性を持つキノコであることから、ハエトリシメジという名前が付いたということですね。

そして、ハエトリシメジに含まれるハエを誘い出して殺虫する成分が、トリコロミン酸とイボテン酸と言われています。

ハエトリシメジは上記の通りうまみ成分としてトリコロミン酸を含むため、独特の美味しさをもち、キノコマニアの方々には密かに食されているようですが、ハエトリシメジに含まれるイボテン酸は毒性(精神高揚あるいは精神抑制、錯乱、幻覚、震え、痙攣などの症状)があるため、食べすぎは厳禁です。

毒性が知られているイボテン酸にもうま味があることが知られており、トリコロミン酸とイボテン酸を実際に食べて呈味性を比較した研究等も数は少ないですが行われています。

その結果によると、トリコロミン酸とイボテン酸は、通常のうま味成分として用いられている味の素に比べて非常に低い濃度で、うま味を感じることが出来るそうです。

トリコロミン酸の安全性は?

ハエトリシメジが一部の人々に食されていることから、トリコロミン酸はイボテン酸と比較すると毒性は低いとされています。

イボテン酸はその毒性から、当然食品添加物には認可されておらず使用されていません。

そして、イボテン酸と同様にトリコロミン酸の完全な安全性は確認されていないため、現在食品添加物等でも利用されていません

山に生えているハエトリシメジを食べている方も中にはいらっしゃるとのことで、食べる量によっては安全である可能性はありますが、食品業界においては、うま味成分としては、安全性の高いグルタミン酸ナトリウム(MSG、味の素)が絶対的地位を築いているため、トリコロミン酸に安全性が確認されたとしても、食品添加物として実用化される可能性は極めて低いと考えられます。

さらに最近の研究では、ある特定のペプチドが非常に少ない濃度で、うま味を付与することが分かってきているため、残念ながらますますトリコロミン酸の出番は少なくなっていくのではないでしょうか。

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