苦味

苦味を発現する物質の数は非常に多く、その構造は多種多様であります。

アルカロイド(窒素原子を含み、ほとんどの場合塩基性を示す天然由来の有機化合物)としては、ブルシン、ストリキニーネ、キニーネ、ニコチン、カフェイン、テオブロミンなどが知られています。これらは非常に低濃度で苦味を呈します
塩化マグネシウムや硫酸マグネシウムのような無機化合物でも苦味を呈するものもあります。
テルペン類(イソプレンを構成単位とする炭化水素)にも苦味を有するものが多く、柑橘類の代表的な苦味成分であるリモネンやホップの苦味成分もテルペン構造を有します。
苦味を有する配糖体も数多く存在し、ゲンチアナから分離されたゲンチオピクリン、センブリより分離されたスウェルチアマリンは、グルコースを有する配糖体です。
L型の疎水性アミノ酸および疎水性アミノ酸を含むペプチドは、苦味を呈し、チーズや大豆食品などに含まれます。
一般に、苦味物質の味覚閾値は非常に低く、苦味物質は疎水性物質であるため、味受容膜の苦味受容サイトに疎水結合で結合しやすいためと考えれられます。またキニーネやストリキニーネのように中性で正電荷を有するが多く、味受容膜表面は負の電荷を有するので、正電荷を有する物質はとくに結合しやすいと考えられます。テルペンの苦味については、分子内のプロトン供与基とプロトン受容基とが1.5Å以内にあることが苦味発現に関与しているといわれています。

苦味は一般に不快に感じる場合が多く、薬などを飲む際にもオブラートに包む等の工夫がなされています。
食品用にも苦味のマスキング剤が多数存在しており、ペプチド由来のものや、リン脂質などが使用されています。
これらマスキング素材のメカニズムとしては、味細胞の味受容膜の疎水性部位へ吸着して、苦味受容サイトを覆うことで、苦味を抑制していると考えられます。甘味、酸味、塩味物質は親水性物質であるため、受容サイトも親水的であると考えられ、マスキング素材を疎水的にしておくことで、これらの味を抑制せず、苦味のみを選択的に抑制することが可能であると考えられます。

フェニルチオ尿素(PTC)に対する味覚閾値は人によって大きく異なっていることが知られています。PTCに対する閾値の高い人は、PTCのみならずN-C=S基を持つ一連の化合物に対する感受性が低い(味盲)ことが知られています。しかし、ほとんどの苦味物質、酸味、塩味及び甘味物質に対しては正常の感受性を示します。この性質は遺伝的要因で決まるとされています。

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