タンパク質

前頁でも述べましたが、タンパク質はアミノ酸がつながってできた天然の高分子です。天然に存在するタンパク質の種類は多く、食品成分の中でも構造や性質が多々存在します。このような多々存在するタンパク質の分類には、組成や溶解度、分子形などに基づいた方法で分類分けされています。タンパク質は大別すると、単純タンパク質複合タンパク質誘導タンパク質に分けられます。

単純タンパク質

完全加水分解することでα-アミノ酸のみを生ずるタンパク質を単純タンパク質といい、溶解性の違いによってさらに、アルブミン、グロブリン、グルテリン、プロラミン(グリアジン)、硬タンパク質、ヒストン、プロタミンに分けられます。

アルブミン
分子量は数万程度、水、希塩類溶液、酸、アルカリに可溶であり、熱、アルコールなどにより凝固する性質を有します。アルブミンはグロブリンとともに、動植物界に最も広く分布し、成熟した細胞のすべての原形質中のタンパク質の大部分を形成します。また乳、卵、種子中に食料として豊富に存在し、動物では血液中にも存在します。例としては、卵白アルブミン、血清アルブミン、丹生アルブミン、小麦のLeucosin等があります。

グロブリン
アルブミンと性質は似ていますが、異なる点として水に不要な点があります。動物性グロブリンは分子量が数万であるのに対し、植物性グロブリンは10万以上の大分子が多いです。また、動物性グロブリンは熱により凝固しますが、植物性グロブリンは比較的凝固しにくいのが特徴です。グロブリンもアルブミンと同様動植物の組織に広く存在しています。例としては、血清グロブリン、ラクトグロブリン、ミオシン、インスリン、ペプシン、リゾチーム等があります。

グルテリン
水、塩類溶液およびアルコールには不要ですが、希酸、希アルカリにはよく溶けるのが特徴です。穀類中に広く存在しますが、種類によっていその含量は異なります。よくパン等を作る際に重要とされているグルテンは、グルテリンの一種であるグルテニンとグリアジンを混ぜ合わせることで形成されます。例としては、小麦のグルテニン、米のオリザニンなどが知られています。

プロラミン(グリアジン)
アルコールや希酸、希アルカリに溶けますが、水、塩類溶液には溶けません。このタンパク質はグルタミン酸の含量が多く、リジンはほとんど含まれていません。グルテリンとともに穀類にのみ存在し、植物の胚乳に多いのが特徴です。例としては、小麦のグリアジン、トウモロコシのツェインなどが知られています。

硬タンパク質
すべての中性溶媒に溶けず、保護的な役割を果たしている場合が多いです。濃酸、濃アルカリにはとけますが、その際同時に変性する場合が多いです。例としては、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等があります。

ヒストン
塩基性の強いタンパク質で、アルギニン含量が多いのが特徴です。ヒストンは核酸と結合して、核タンパク質として存在することが多いです。例としては、血液中のヘモグロビンのタンパク部分であるグロビン、胸腺ヒストンなどがあります。

プロタミン
ヒストン同様強い塩基性のタンパク質で、水や希酸によく溶けます。プロタミンも核酸と結合していることが多いです。例としては、鮭のSalmine、ニシンのClupeinなどが知られています。

複合タンパク質

加水分解によってα-アミノ酸以外に種々の物質が得られる場合、すなわち非タンパク質部分を補欠分子として含有するものをいいます。複合タンパク質は、補欠分子の違いによって、核タンパク質、リンタンパク質、リポタンパク質、色素タンパク質、糖タンパク質などがあります。

核タンパク質
核タンパク質は、DNAやRNAなどの核酸とタンパク質が結合したもので、タンパク質の種類としては、前述したヒストンやプロタミンなどがあります。

リンタンパク質
リンタンパク質は、リン酸とタンパク質が結合したもので、生体内で重要な働きをしている場合が多いです。例としてはカゼインや卵黄に含まれるものなどがあります。

リポタンパク質
リポタンパク質は、脂質とタンパク質が結合したもので、動植物体内に広く存在します。例としては、卵黄に含まれるLipovitellinやLipovitelleninが該当し、リン脂質であるレシチンを含むことが知られています。

色素タンパク質
色素タンパク質は、色素とタンパク質が結合したもので、一般に色素成分中には金属が含まれるため、金属タンパク質とも呼ばれます。例としては、カタラーゼ、ラッカーゼなどの酵素が多く該当します。

糖タンパク質
糖タンパク質は、糖とタンパク質が結合したもので、その特有の粘性のために粘性タンパク質とも呼ばれます。糖は比較的高分子の形で結合している場合がおおく、例としては、コンドロイチン硫酸やヒアルロン酸、オボムチンなどが該当します。

誘導タンパク質

誘導タンパク質は天然のタンパク質が化学試薬や酵素によって加水分解やその他の変化、物理的変性をうけて生じたものを総称します。もとのタンパク質と性質が異なりますが、大部分の骨格はそのまま残っているものや、分解が進み、構造も大きく異なるものが存在します。ゼラチン、プロテアン、メタプロテイン、凝固タンパク質などが該当します。

ゼラチン
コラーゲンを水と長時間煮沸することで不可逆的に温水に可溶、冷水に不溶の物質に変化し、これをゼラチンといいます。

プロテアン
水溶性のタンパク質から、水、酵素、酸等によって変化を受け、不溶性になったものをいいます。

メタプロテイン
グロブリン及びアルブミンに希酸または希アルカリを作用させ変性させたタンパク質をいいます。

凝固タンパク質
アルブミン、グロブリン等のタンパク質は熱、紫外線、機械的撹拌、アルコールとの長時間接触等の操作により凝固したものをいいます。

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