酸味の発現機構は比較的単純であり、酢酸に代表される酸味物質は解離してプロトンを生成し、これが味覚受容体に結合すると酸味刺激が引き起こされます。よって、解離度の大きい塩酸のような強酸の方が酸味が強いですが、同じpHでの酸味の強さはそれとは一致しないことが知られています。様々な仮説が存在しますが、有機酸は無機酸よりも受容膜に吸着しやすく、膜に吸着した有機酸の負電荷は膜表面の正電荷を中和します。この結果、膜表面の正味の正電荷が減少することで、正電荷を有するプロトンに対する静電気的反発力が減少するため、同じpHでもプロトンがより容易に膜に結合し、大きな電位変化を引き起こすとされています。
また酸の種類によってにおいや味が異なり、酢酸などの揮発性の酸はツーンとしたにおいがしますが、クエン酸やアスコルビン酸は揮発性ではないので、においはしません。それぞれの酸は微妙に違う味を持っていますが、これは陰イオンの違いによるものとされています。
酸味を感じさせる素材を酸味料と呼び、代表的なものとしては酢酸(酢)、クエン酸(ポン酢)、コハク酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、グルコン酸、リン酸などが存在します。これらの酸味料は、清涼飲料水やキャンディー、ゼリー、ジャムなどに使われています。