脂質

食品中の脂質はエーテル、クロロホルムあるいはベンゼン等の有機溶媒で抽出定量され、これは粗脂肪(エーテル可溶性物)と呼ばれます。粗脂肪中には、中性脂肪、ワックス、リン脂質、ステロール、炭化水素あるいは色素が含有されています。

中性脂肪

中性脂肪は常温で固体のものについては脂肪、液体のものは油と呼ばれることが多いです。中性脂肪はグリセロール1分子に脂肪酸が3個結合したものが多く、これをトリグリセリドと呼んでいます。トリグリセリドを水と長時間煮沸すると脂肪酸とグリセロールに分かれ、これを加水分解反応と言い、この反応は「リパーゼ」と呼ばれる酵素によっても促進されます。加水分解反応でアルカリを使うと、脂肪酸の代わりに石鹸ができ、この反応を鹸化といいます。グリセロールに結合する脂肪酸は様々であり、代表的なもので、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などがあります。

ワックス

ワックスとは高分子の1価アルコールと脂肪酸とからなるもので、中性脂肪のグリセロールの代わりに高分子のアルコールが結合しているものです。ワックスは、果物や植物の葉の表面を覆っており、虫害や微生物の侵入から防いでおり、動物では水を受け付けないようにしています。ハチミツのロウもこの仲間で、炭素数はC24~C36のものが多いです。

リン脂質

リンを含んだ脂質をリン脂質といいますが、動植物中の組織にかなり含まれ、卵黄やレバー、大豆、小麦にも含まれます。グリセロリン酸に2個の脂肪酸が結合したものをホスファチジンと呼び、これに3種の窒素化合物が結合して次の3種のリン脂質ができます。

ホスファチジルコリン
窒素化合物としてコリンが結合したものをホスファチジルコリンといいます。古くから卵黄に発見されており、脂質を乳化する性質があるほか、動物細胞膜の成分でもあります。ホスファチジルコリンを豊富に含むレシチンは、乳化剤として広く使われ、油と水の表面張力を低下させ、乳化状態を維持させることが可能です。

セファリン
ホスファチジルコリンのコリンの代わりにエタノールアミンが結合したものをセファリンといいます。セファリンは血液凝固の際に重要な役割を果たしています。

ホスファチジルセリン
窒素化合物として、セリンが結合したものをホスファチジルセリンといいます。セリンからエタノールアミンもコリンも作られるため、リン脂質の母体といえます。

ステロール

ステロールには動物油中のコレステロール、動植物中のフィトステロール、微生物油中のエルゴステロールがあります。コレステロールは肝油には多いですが、一般の油にはほとんど含まれていません。動脈硬化の原因の1つとしてコレステロールの多いものを食べるためと考えられているので、コレステロールの多い食品は避けられる傾向にあります。食品中のコレステロール含量は卵黄が多く、レバー、バターが多いです。コレステロールの1種であるエルゴステロールは、紫外線照射によりビタミンD2になるため、プロビタミンD2と呼ばれます。

炭化水素

天然油脂の中に存在する炭化水素の代表はスクワレンであり、不飽和2重結合を多数有する鎖状化合物です。サメ肝油には26%程度含まれますが、米油中には0.3%しか含まれません。イソプレンが重合してできた構造であり、スクワレンに似た構造でフィトールというものがありますが、植物油やバターの中に存在しています。

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