飲料の原材料表示によく「果糖ぶどう糖液糖」という表示があるのはご存じですか?
この果糖ぶどう糖液糖は、砂糖の代わりに様々な食品に用いられていますが、意外と消費者の方はイメージしずらいものとなっています。
そこで本記事では果糖ぶどう糖液糖について解説いたします。
果糖ぶどう糖液糖とは
果糖ぶどう糖液糖は、果糖(フルクトース)とぶどう糖(グルコース)を主成分とする液状の糖です。
原料は、とうもろこしやじゃがいも、さつまいも由来の澱粉であり、澱粉を酵素によって小さく(低分子化)し、その後、ぶどう糖から果糖へ変換する反応(異性化反応)を行うことによって得られます。
また、果糖の含有率が50%以上90%未満のものを果糖ぶどう糖液糖といいますが、果糖の割合が50%以下のものをぶどう糖果糖液糖、果糖の割合が90%以上のものを高果糖液糖といいます。
果糖ぶどう糖液糖の特徴
果糖ぶどう糖液糖に含まれる果糖は、低温時に甘さが増し、清涼度が強くなるという特性を有するため、清涼飲料や冷菓に多く利用されています。
砂糖の代わりに甘さを出す素材としても用いられます。
砂糖の甘みの強さ(甘味度)を100とすると、ぶどう糖の甘味度は65~80、果糖は120~170ですので、異糖ぶどう糖液糖の甘味度は、約100~120とされています。
しかし、実は甘さというのは温度の影響も大きく、特に果糖の場合は、高温では甘味度が低く、40℃で砂糖とほぼ同一、それ以下の温度では砂糖よりも甘くなる傾向があります。
よって、ブドウ糖と果糖の混合物である異性化糖の甘みの質は、温度によっても左右され、その性質が冷菓や飲料に使われる理由の1つでもあります。
また、ブドウ糖と果糖のいずれも砂糖より甘みがすっきりしており、持続性が低い性質があります。
果糖ぶどう糖液糖の製造方法
果糖ぶどう糖液糖は上述の通り、澱粉から酵素反応によって作られます。
まず、澱粉に水と熱を加えながら液化酵素という酵素を加え、酵素反応によって澱粉をある程度の大きさに分解します。
これを液化液と呼びます。
続いて、液化液に対して糖化酵素という酵素を加え、ぶどう糖になるまで分解します(澱粉はぶどう糖から出来ているので、分解すると、ぶどう糖になります)。
出来たぶどう糖に対して、異性化酵素(グルコースイソメラーゼ)という、グルコースを果糖に変換する酵素で処理することで、ぶどう糖と、果糖が混合している液糖を作ります。
このとき、果糖の割合が約40~45%程度ですので、混合物から果糖を分離する機械によって、果糖90%以上の液糖(高果糖液糖)を作ります。
そして、果糖の割合が約40~45%のものと、高果糖液糖を任意の割合で混合し、果糖ぶどう糖液糖を製造します。
果糖ぶどう糖液糖の規格
果糖ぶどう糖液糖の規格は、異性化液糖の規格として日本農林規格によって定められており、以下のようになっています。
糖分 | 70%以上 |
電気伝導率灰分 | 0.05%以下 |
果糖含有率 | 35%以上であり、かつ、表示含有率に適合していること |
糖のうちのぶどう糖及び果糖以外の還元糖の割合 | 果糖含有率が40%未満のものにあつては15%以下、40%以上50%未満のものにあつては8%以下、50%以上のものにあつては6%以下であること。 |
水素イオン濃度 | pH 3.5以上6.0以下であること。 |
着色度 | 0.20以下であること。 |
濁度 | 0.15以下であること。 |
原材料 | でん粉以外のものを使用していないこと。 |
添加物 | 使用していないこと。 |
内容量 | 表示重量に適合していること。 |
表示事項 | 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の規定(名称、保存の方法、賞味期限、原材料名、食品関連事業者の氏名又は名称及び住所並びに原産国名については、食品表示基準第10条第1項前段(義務表示の対象から除かれる販売形態に係る部分に限る。)及び第4項並びに第11条第1項を除く。)に従うほか、次の事項を表示してあること。
1 果糖含有率 2 内容量 |
表示の方法 | 食品表示基準の規定に従うほか、名称、果糖含有率、原材料名及び内容量の表示は、次に規定する方法により行われていること。
1 名称 ぶどう糖果糖液糖にあつては「ぶどう糖果糖液糖」と、果糖ぶどう糖液糖にあつては「果糖ぶどう糖液糖」と、高果糖液糖にあつては「高果糖液糖」と記載すること。 2 果糖含有率 果糖含有率を実含有率を上回らない5の整数倍の数値により、パーセントの単位をもつて、単位を明記して記載すること。ただし、42%以上45%未満のものにあつては42%と記載してもよい。 3 原材料名 「でん粉」と記載すること。 4 内容量 内容重量をグラム、キログラム又はトンの単位で、単位を明記し示て記載すること。 |
表示の方式等 | 食品表示基準の規定に従うほか、次に定めるところにより、容器若しくは包装の見やすい箇所又は送り状に表示してあること。
1 別記様式により行うこと。ただし、表示事項が別記様式による表示と同等程度に分かりやすく一括して表示される場合は、この限りではない。 2 表示に用いる文字及び枠の色は、背景の色と対照的な色とすること。 3 表示に用いる文字は、日本工業規格Z 8305(1962)(以下「JIS Z8305」という。)に規定する8ポイントの活字以上の大きさの文字とすること。ただし、表示可能面積がおおむね150cm2以下のものにあっては、JIS Z 8305に規定する6ポイントの活字以上の大きさの文字とすることができる。 |
表示禁止事項 | 表示禁止事項食品表示基準の規定に従うほか、含有する糖の一部の名称を他の糖に比べて誇大に表示する用語(当該糖の糖全体に対する含有率をパーセント
の単位で、当該糖の名称の表示の文字と同程度の大きさで付してあるものを除く。)及び表示事項の項の規定により表示してある事項の内容と矛盾する用語を表示していないこと。 |
果糖ぶどう糖液糖の食品ラベルでの表示
果糖ぶどう糖液糖を食品に使用した場合、食品パッケージの裏側にある原材料表示の欄に「果糖ぶどう糖液糖」と表示されます。
ただし、加工食品品質表示基準(第4条)の原材料名の簡略表示において、ぶどう糖果糖液糖、果糖ぶどう糖液糖及び高果糖液糖は、「異性化液糖」という名称で記載されることが許されているため、場合によっては異性化液糖として記載されていることもあります。
果糖ぶどう糖液糖の安全性
果糖ぶどう糖液糖は、上述したとおりぶどう糖と果糖の混合物であり、それぞれは体内で吸収されエネルギーとなることが可能です。
よって、安全性には全く問題ありませんが、砂糖などの糖類と同様に、摂取しすぎると糖尿病や肥満といった生活習慣病を引き起こす可能性はあります。
また、果糖ぶどう糖液糖の原料であるとうもろこしは、遺伝子組換えのものが使用されているケースがあります。
遺伝子組換えと聞くと危険なイメージがありますが、様々な観点から安全性試験が実施されており、現在のところは特に安全性の問題がないという結論がでておりますので、それほど気にすることではないと考えています。