チョコレートには規格基準があることをご存知でしょうか。
チョコレートを販売するにあたり、表示に細かい規約が定められています。
1971年(昭和46年)業界の自主ルールとして「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(以下、規約)が規定されました。
その後、市場や業界の変化に応じて何度も改正が行われ、現在に至っています。
ここでは、規約の中から、チョコレート生地の定義と、チョコレート製品の定義について解説していきます。
Contents
チョコレート生地の定義
チョコレート生地とは、製造前の溶けたチョコレートや、原料として固まっている状態のチョコレートのことをいいます。
チョコレート生地には「チョコレート生地」と「準チョコレート生地」の2種類があります。
「チョコレート」と「準チョコレート」は、生地で使用するカカオやカカオに含まれるココアバター、水といった原材料の比率によって分類されます。
「チョコレート生地」というためには、ココアバターが18%以上、水分が3%以下で、カカオ分もしくはカカオ分とミルク分の合計が35%以上であることを定義しています。
規約では「チョコレート生地」を「基本タイプ」と「カカオ分の代わりに乳製品を使用したタイプ」に分けて定義しています。
一方「準チョコレート生地」は「基本タイプ」と「準ミルクチョコレート生地」の2種類に定義されています。
いずれも「チョコレート生地」よりもカカオ分の比率が低く設定されているため、カカオの風味は乏しくなります。
チョコレート製品の定義
続いて規約では、消費者が商品を選択するための目安になる「種類別名称」としてチョコレート製品を9種類に分類しています。
① チョコレート…チョコレート生地単独か、生地の比率が全体の60%以上の加工品
② 準チョコレート…準チョコレート生地単独か、生地の比率が全体の60%以上の加工品
③ チョコレート菓子…他の食材と組み合わせて作られる菓子でチョコレート生地が60%未満のチョコレート加工品
④ 準チョコレート菓子…他の食材と組み合わせて作られる菓子で準チョコレート生地が60%未満のチョコレート加工品
⑤ カカオマス
⑥ ココアバター
⑦ ココアケーキ…カカオマスからココアバターを一定量取り除いて固形のブロック状にしたもの
⑧ ココアパウダー…=ココア。ココアケーキを粉砕して粉末状にしたもので、水分7%以下のもの。洋菓子の原材料としても用いられる。
⑨ 調整ココアパウダー…=調整ココア。ココアパウダーに糖類、乳製品、麦芽、ナッツなどを加えて、飲みやすくしたもの
チョコレート加工品とは、チョコレート生地・準チョコレート生地と、ビスケット、ナッツなど食べ物を組み合わせたものをいいます。チョコレート加工品のなかでも、チョコレート生地・準チョコレート生地が全重量の60%以上の場合の種類別名称は「チョコレート」「準チョコレート」となります。
チョコレート菓子の定義
チョコレート生地が60%未満の場合に「チョコレート菓子」と呼べるかどうかは、商品性から細かく定められています。
① チョコレート生地にナッツ、フルーツ、パフなどを混合したり、練りこんだりしたもの。チョコレートの重量が全体の40%以上。
② ナッツ、ヌガー、ビスケットなどに、チョコレート生地をかけたり、くるんだりしたもの。チョコレートで覆う面積が全体の70%以上で重量が20%以上。
③ チョコレート生地でシェル(殻)を作り、中にクリーム、ジャム、ナッツなどを入れたもの。チョコレートの重量が全体の40%以上。
④ チョコレート生地をキャンディーや糖類でくるんだもの。チョコレートの重量が全体の30%以上。
⑤ チョコレート生地をビスケットやスナックなどに挟んだり、つけたりしたもの。チョコレートの重量が全体の30%以上。
①~⑤に当てはまらないものは、種類別名称で「チョコレート菓子」と表示することはできません。
色々なチョコレートの定義
チョコレートには、様々な定義があり、チョコレート生地やチョコレート製品の定義については、前回の記事で解説しました。ここではその他の重要な定義について紹介します。
純チョコレート
純チョコレートはチョコレート生地自体、またはチョコレートの生地のみで作られたものです。通常のチョコレートの定義よりも、さらに原材料、原料配合を厳格化しています。
① カカオ成分はココアバターだけ、またはココアバターとカカオマスだけ。
② 脂肪分はココアバターと乳脂だけ。
③ 糖類はショ糖のみで、使用量は全重量の55%以下。
④ 乳化剤であるレシチンは、全重量の0.5%以下。
⑤ レシチンとバニラ系香料以外の添加物は使わない。
これらの厳密な基準をすべて満たしたチョコレートだけが「純チョコレート」や「ピュアチョコレート」と表現されます。
ミルクチョコレートと準ミルクチョコレート
ミルクチョコレート生地を使用したチョコレートは「ミルクチョコレート」、準ミルクチョコレート生地を使用した準チョコレートは「準ミルクチョコレート」と商品名に表現できます。
生チョコレート
チョコレート生地が全重量の60%以上であって、クリームが全重量の10%以上、かつ水分(クリームに含有されるものを含む)が全重量の10%以上であるチョコレートは「生チョコレート」となります。これを全重量の60%以上使用しているチョコレート加工品びついては、商品名などに「生チョコレート」と(強調して)表現できます。
ナッツ類、果物類などの表示
チョコレートにナッツ類、果物類、野菜類、はちみつ、メープルシロップ、黒砂糖、コーヒー、その他の原材料を使用していることを商品名、絵、写真、説明文などに表示する場合の含有量が定められています。ナッツ、果物類は製品重量の5%以上、はちみつ、メープルシロップ、黒砂糖は全重量の2%以上、コーヒーはコーヒー生豆に換算して全重量の1.5%以上含有することが基準になっています。
「豊富」「たっぷり」などの表示
規定している基準量の2倍以上の量(ナッツ、果物類に関しては全重量の10%以上)使用していなければ、「豊富」「たっぷり」とは表示できません。
表示が義務付けられている事項
チョコレート類は、消費者が商品選択の目安となる事項を容器や包装に一括表示し、欄内に日本語かつ文字も8ポイント以上の大きさで明確に表示することを義務付けています。
必要な表示事項
① 種類別名称…種類別名称(種類別、名称又は品名とすることができる)のいずれかを表示する。
② 原材料名…原材料と食品添加物を区分して使用量の多いもの順に表示する。
③ 内容量…内容重量または内容数量等の単位を明記して表示する。
④ 賞味期限…一括表示が困難な場合は記載箇所を表示し、他の箇所に表示できる。
⑤ 保存方法…括表示が困難な場合は記載箇所を表示し、賞味期限に近接して表示できる。
⑥ 原産国名…輸入品は国名、輸入品と紛らわしい国産品は「日本」等と表示する。
⑦ 食品関連事業者…製造者、加工者、販売者、輸入者の文字の後に、表示責任者の氏名及び住所を表示する。また、製造所所在地及び製造者の氏名(製造者固有の記号の表示でも可)または加工所所在地(輸入品にあたっては、輸入業者の営業所在地)を表示する。
禁止されている不当な表示
規約では、一般消費者が品質・内容等を誤認することがなく自主的かつ合理的な商品選択ができるように、下記のような不当な表示を禁止しています。
① チョコレートが他の食品に比べて著しく優良であると誤認されるような表示
② チョコレートやチョコレート菓子などの定義・規格に合致しないものを、それらのものであると誤認されるような表示
③ 生チョコレートの基準に適合しないものの生チョコレートと誤認されるような表示
④ 果物を使用していないのに果物そのものを使用していると誤認されるような表示
⑤ チョコレート又はココアパウダーの純粋を意味する文言の表示基準に合致しないものについて、純良、Pure、純粋、純等の文言を使用することにより、品質が特に優良であると誤認されるような表示
⑥ ミルクチョコレート・準ミルクチョコレート・ドリンクチョコレートの表示、ナッツ・果物などを使用している旨の表示、特定の原産地(国)のもの・原材料が特色あるものの表示、チョコレートの製法の表示などの特定表示事項の基準に合致しない表示
⑦ 最高級・極上、天然・自然・新鮮、特濃・濃厚などの文言を客観的な根拠に基づかないで使用することにより、品質が特に優良であると誤認されるような表示
⑧ チョコレートに使用した原材料などを実際よりも著しく優良又は多く(又は少なく)含まれていると誤認されるような表示
⑨ 賞でないものを賞であるように、また、他のもので受けた賞をそのチョコレートで受けたと誤認されるような表示
⑩ 官公庁や著名人などが購入又は推奨していると誤認されるような表示
⑪ チョコレートの価格、取引条件、景品などが実際のもの又は他の事業者のものよりも、著しく有利であると誤認されるような表示
⑫ 内容物の保護、品質保全の限度を超えた著しく過大な容器包装
⑬ 原産国について誤認されるような表示
⑭ 他の事業者又は他の事業者のチョコレートを中傷、誹謗するような表示
⑮ 会社の伝統、生産設備、販売シェアーなどが実際よりも又は他の事業者よりも、著しく優位であると誤認されるような表示
⑯ チョコレートの商品名、商標、意匠などについて、他の事業者のものと同一又は著しく類似した表示