ここ数年、世界中のチョコレート業界において、重要なキーワードに「Bean to Bar」があります。
最旬トレンドといえるBean to Barとは何か、その広がりについてまとめてみました。
「Bean to Bar」とは
カカオ豆(Bean)から板チョコレート(Bar)まで、製造者が一貫して手掛けるスタイルをBean to Barといいます。
本来の製法は、既にブレンドされた板チョコレートを溶かしなおし、独自の味付けをするのがほとんどでした。
ひとつの工房で全ての工程を行うことは、温度や時間の調整など、手間と時間とコストがかかります。
しかしその分、豆の状態や季節など様々な条件に合わせて、きめ細かい対応ができるメリットがあります。
具体的には、セレクトしたカカオ豆をローストし、作り手が考える配合や製法で、板チョコレートを製造するという過程になります。
ここ数年、日本国内でもBean to Barのチョコレートへの関心が高まり、新しい作り手や、専門店が増えてきました。
「Bean to Bar」の歴史と広がり
1990年代後半、アメリカ・サンフランシスコのシャーフェンバーガーというチョコレートメーカーがアメリカでのBean to Barの先駆けと言われています。
2000年代に入ると、続々とBean to Barの新たな作り手が登場し、今では全米各所に広がっています。
あえて古い機械を使ったり、逆にIT技術を使ったり、その形も様々です。
アメリカでは、比較的小規模生産のこだわりがあるBean to Barチョコレートを「Craft Chocolate」と呼んだり、パッケージに「Small Batch」と記載したりするなど、大量生産のチョコレートとの差別化を図るところもあります。
一方フランスでは、老舗ショコラトリーであるボナや、ベルナシオンなどが、味を追求してカカオ豆のローストから手掛けるチョコレート作りを行ってきました。
中でも2014年に創業130周年を迎えたボナは、ショコラティエ自らがカカオ農園まで行き、カカオ豆の検査や選別に関わり、現地の状況改善にも取り組んでいる数少ないショコラトリーです。
最近では、カカオポッドからカカオ豆を取り出すところから始める「Pod to Bar」や、カカオの樹の生産、管理から行う「Tree to Bar」と呼ばれる取り組みを行うメーカーや、ショコラティエもいるようです。
Bean to Barは、カカオ豆自体が持つ風味や個性を生かすことにこだわりを持った作り手が多いのも特徴です。
また、異業種からの参入も多く、従来のチョコレート作りにとらわれない、新しいアイデアで個性的な商品も多いようです。
新しい潮流「ダークミルク」
近年、新しいタイプのミルクチョコレートの潮流として、「ダークミルク」と呼ばれるものがあります。
一般的なミルクチョコレートはカカオ分が30~40%である一方、ダークミルクは、カカオ分が50%以上、中には60%以上の商品もあるチョコレートです。
ほろ苦いカカオの風味が味わえるビタータイプのミルクチョコレートです。
こうした商品は、製造や配合を工夫できるBean to Barならではの新しい味わいです。
ダークミルクはアメリカで多く作られる傾向がありますが、最近では日本でも見かけるようになってきました。
日本のBean to Bar専門店
最後に日本で楽しめるBean to Bar専門店をいくつか紹介します。
*アルチザン パレ ド オール(山梨県北杜市)
日本を代表するショコラティエの1人、三枝俊介氏が2014年11月にオープン。
年間10トン近くのカカオ豆を扱い、世界的に見ても本格的な規模を誇る。
豆からのチョコレート作りに適した冷涼な清里高原から生まれた数々の商品は、東京・大阪各店でも購入可。
*ダンデライオン・チョコレート(東京都台東区)
特定の産地にこだわったシングルオリジンのカカオ豆と、オーガニックのケインシュガーのみを使用。
カカオ豆は生産者の農家を直接訪れ、ときには発酵と乾燥までのプロセスについて話し合い、直接交渉を行った上で輸入している。
東京以外にも、伊勢神宮外宮店、鎌倉店、京都店などの店舗を展開。
https://dandelionchocolate.jp/
*ダリケー(京都府京都市)
日本におけるBean to Bar専門店の草分け的存在。
2011年に京都で創業。
独自に調達するカカオ豆の産地であるインドネシア・スラウェシ島において栽培指導から手掛けるスタイルは、Tree to Barとも称される。2015年より毎年、サロン・デュ・ショコラ パリに出店し、ブロンズアワードを3年連続受賞。
*バニラビーンズ(神奈川県横浜市)
インターネット通販のチョコレート専門店が2014年1月にオープンした旗艦店。
チョコレートの製造工程が見られるガラス張りの工房が併設。
10種類以上のカカオ豆を使用し、直接カカオ農家との取引も行いながら、「カカオハンター」の名で知られる小方真弓氏からもカカオを仕入れている。
https://www.rakuten.ne.jp/gold/vanilla/