海藻由来の多糖類であるアルギン酸は非常にユニークな性質を持っています。
産業的には、人工イクラの原料に使われており、私たちの生活に欠かせないものです。
本記事では、そんなアルギン酸について纏めてみました。
Contents
アルギン酸
アルギン酸は、昆布やワカメ等の褐藻類に含まれる天然の多糖類です。
含有量は、乾燥重量あたり30~60%程度が含まれております。
アルギン酸は、1880年代にスコットランドの学者によって単離、命名され、以後、食品、医薬品、化成品等、様々な分野で利用されています。
アルギン酸の特徴として、海水中のミネラルによって塩を形成し、ゼリー状態で褐藻類の細胞間隙を満たしており、これが、海藻のしなやかさを生み出しているとされています。
アルギン酸の構造
アルギン酸は、β-D-マンヌロン酸と、α-L-グルロン酸がつながった直鎖状多糖で、2種類のウロン酸がどのように結合しているかによって、大きく3つのブロックに分けられます。
Mブロック
β-D-マンヌロン酸のみから成るブロック
Gブロック
α-L-グルロン酸のみから成るブロック
ランダムブロック
β-D-マンヌロン酸とα-L-グルロン酸がランダムに結合したブロック
アルギン酸の製造方法
アルギン酸の製造方法は、大別すると2種類に分けられ、1つが酸を利用して製造する方法、もう1つがカルシウムを利用して製造する方法です。
酸法
カルシウムの残存が少ない製法で、乾燥した褐藻原料を粉砕した後、水と酸の溶液で原料を膨潤させます。
その後、アルカリ溶液でアルギン酸を抽出し、分離、ろ過します。ろ過したものを、酸性溶液で不溶化し析出させることで製造します。
アルギン酸の安全性
アルギン酸は、ワカメ等の海藻にも含まれている多糖類ですので、比較的安全性の高いものであると考えられます。
アルギン酸とその塩類の安全性は国連機関(JECFA:FAO/WHO合同食品添加物専門委員会)で評価され、ADI(一日許容摂取量)は「特定しない」という結果になっているそうです。
アルギン酸の性質
アルギン酸の最大の特徴は、陽イオンの存在によって性質が大きく変化することです。
理由としては、アルギン酸は負電荷を帯びるカルボキシル基を多数持っているため、陽イオンと相互作用するからです。1価の陽イオンを含む水溶液では、カルボキシル基は解離し、負電荷を帯びるため、アルギン酸の直鎖状分子は相互に反発し、溶解します。
2価以上の陽イオンの存在下では、イオン架橋が生じ、分子間が相互作用することによって号増加し、チキソトロピックな粘度を発現します。
さらに、イオン濃度を上げると、アルギン酸分子は水溶液中で動けなくなり、ゲル化します。さらに濃度を高くすると、不溶性の塩として析出します。
アルギン酸塩のカルシウムイオンによるゾル-ゲル転移機構は、バックル型のリボン状をしたGブロック同士がカルシウムを抱き込んで、卵の形のような構造(Egg box junction)を形成することに起因します。
カルボキシル基や水酸基が、キレートのように配位し、カルシウムイオンを抱き込むためです。
溶解性
アルギン酸をナトリウムフォームにしているアルギン酸ナトリウムは、熱水中で速やかに水和、溶解します。
溶解した水溶液は中性で、滑らかな粘性(ニュートン性流動)を示します。
粘度
滑らかな粘性を示し、粘度は分子量に従って増大します。また、温度が高いほど粘度が低くなる特徴を有します。
1価の塩をアルギン酸溶液に加えると粘度が減少し、これは電解質に水が奪われることによってアルギン酸の分子が収縮するためです。
一方、多価カチオンによってアルギン酸の粘度は上昇し、やがてゲル化します。
アルギン酸の利用法
アルギン酸は、カルシウム溶液と接触すると瞬時にゲル化する性質があります。
そのため、それを利用して人工イクラやアルギン酸繊維紙等に利用されています。
具体的には、カルシウム水溶液中にアルギン酸溶液を滴下することで、球形のゲルを形成させたり、ノズルから注入することで線形ゼリーを形成させることが可能です。
食品分野での利用
人工イクラやフカヒレ状のゼリー物質の製造や、アイスクリームの安定剤、小麦粉製品の保水性向上等、幅広い用途で使用されています。
医薬品分野
酸性条件では水に溶けず、中和されると水に溶けるという性質を利用して、錠剤の崩壊剤に使用されています。
酸性の胃ではアルギン酸が溶解しないため崩壊剤として機能せず、一方、腸の中で徐々に周辺のpHが高くなるにつれ、アルギン酸が溶け始め、そこで初めて錠剤が崩壊して薬効成分が放出されるため、有効成分を効率的に腸に運ぶことが可能です。
アルギン酸は通販でも購入可能
このように独特な性質を持つアルギン酸ですが、実は通販で簡単に買うことが出来ます。
ですので、子供の自由研究等に使用すると面白いと思います。
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