食品添加物のペクチンについてご存知ですか?
ペクチンはゲル化剤、増粘剤、安定化剤として様々な食品に用いられています。
本記事では、ペクチンの性質や利用方法について記事にしました。
Contents
ペクチンとは
ペクチンは、1825年にH.Braconnotというフランス人の方が発見し、ギリシャ語で固いという意味のpectosという言葉を語源にペクチンと命名されたそうです。
ペクチンは植物の細胞壁に存在し、細胞同士をつなぎ合わせるセメントのような役割を果たしています。
ペクチンは、20世紀ごろから工業的に利用され始め、原料は産業利用の観点から、リンゴや柑橘類の皮が使用されているそうです。
ペクチンは、様々な食品分野で利用され、年間約2,000t以上流通しています。
ペクチンの構造
天然の状態では、ペクチンは以下の構造の異なる3つの構造から構成されます。
ホモガラクツロナン
ホモガラクツロナンは、最も主となる構造であり、ガラクチュロン酸や、ガラクチュロン酸がメチルエステル化されたものがα-1,4結合で連続的につながった構造です。
ラムノガラクツロナンI
ラムノガラクツロナンⅠはガラクチュロン酸とラムノースのα-1,4あるいは1,2-結合の繰り返し構造で構成されています。
ラムノースからは1,4結合でガラクタン 、1,3結合でアラビナンが側鎖として分岐しています。
ラムノガラクツロナンII
ラムのガラクツロナンⅡは約30の糖からなる複雑な構造であり、ガラクツロン酸、ラムノース、アピオースやメトキシ化したグルクロン酸、フコースなどを含む構造です。
ペクチンの製造工程
リンゴや柑橘果実の皮を、酸や酵素で加水分解し分離、濃縮した後にアルコール沈殿させます。
その後、アルコール水で洗浄し、HM(ハイメトキシ)ペクチンというものが作られます。HMペクチンを脱メチル化処理し、洗浄することでLM(ローメトキシ)ペクチンが作られます。
HMペクチンの構造
LMペクチンの構造
ペクチンの分類
ペクチンは大別すると、HMペクチンとLMペクチンに分かれます。
ペクチンは、カルボキシル基を持つガラクチュロン酸とカルボキシル基がメチルエステル化されたガラクチュロン酸メチルエステルが直鎖状に結合した構造(上述したホモガラクツロナン)を持っており、ガラクチュロン酸とガラクチュロン酸エステルの割合で性質が異なります。
HMペクチンはエステル化度が50%以上のもので、LMペクチンは50%未満のものを指します。
エステル化度とは、ペクチンの構成糖であるガラクチュロン酸のカルボキシル基がメチル化している割合です。
さらに、LMペクチンの中でも、ノンアミドペクチンとアミド基ペクチンが存在し、ガラクチュロン酸のカルボキシル基がアミド化しているものが存在する場合は、アミド基ペクチンとなります。
アミド基ペクチンの構造
原料による性質や構造の違い
また、原料となる植物種によっても、ペクチンの性質は少し異なります。
例えばリンゴのペクチンとシトラスのペクチンを比べた際には、リンゴペクチンは茶褐色の色で少し味がしますが、シトラスペクチンは黄色でもしくは無色で味がしにくいといった特徴があります。
また、粘度についてもシトラスペクチンはすっきりとした粘度で、リンゴペクチンはボテッとしていてボディ感のある粘度になります。
その他、カルシウムの反応性についてはリンゴペクチンの方がシトラスに比べてゆるやかであると言われています。
リンゴペクチンとシトラスペクチンは上述したように性質が異なりますが、それは構造の違いに起因しています。
リンゴペクチンは主鎖に含まれるカルボキシル基によってマイナスにチャージしているガラクチュロン酸が分散して存在しているため、プラスにチャージしているカルシウムイオンの反応を受けにくい性質があります。
一方で、シトラスペクチンはガラクチュロン酸がブロック状に存在しているため、カルシウムイオンを急速に吸着し反応します。
また、側鎖構造も異なり、リンゴペクチンは側鎖が多く毛が生えたような構造になっているのに対して、シトラスペクチンは側鎖がなく棒状の構造となっています。
他には、てん菜から得られるビートペクチンは、タンパク質と複合化している部分を多く含むため乳化効果が高いとされています。
ペクチンの利用
ペクチンは様々な食品分野で利用されますが、特に多いのが酸性乳飲料の安定化剤として用いられる場合です。
それ以外では、ジャム、フラワーペースト、ベーカリー食品、アイスクリーム、ヨーグルトなどでも用いられているようです。
ゲル化剤としての利用
ペクチンはゲル化剤として、ジャムやゼリー、ヨーグルトなどに使用されます。
ゲル化剤としては、LMペクチンが適している場合が多いようです。
増粘剤としての利用
フルーツ飲料や、フルーツソースなどに用いられる場合は、増粘剤として用いられていることが多いです。
安定化剤としての利用
そして、酸性乳飲料に用いられる場合は、安定化剤として使用されることが多いです。
タンパク質の安定化には、HMペクチンが適している場合が多いです。
酸性乳飲料で利用される場合、乳飲料に含まれるタンパク質であるカゼインを安定化(沈殿を抑制する)することが目的であり、カゼインの表面にペクチンが吸着することで、ペクチンの電荷的反発によってカゼイン粒子同士の凝集を防ぎます。
食物繊維としてのペクチン
ペクチンは食物繊維としての性質も有しています。
例えば、下痢や便秘を予防する整腸作用効果があることや、血液中のコレステロールを低下させる働きや、動脈硬化、心筋梗塞、血統上昇抑制効果も期待できます。
ペクチンのゲル化機構
ペクチンは、アニオン性の高分子であるため、カルシウムなどの二価カチオンを加えることで架橋構造(エッグボックスモデル)を形成し、ゲル化する性質を持っています。
カルシウムで生じるゲルは、熱可逆性のゲルとなります。
また、HMペクチンは、メチルエステル化されている部分が多いため、水素結合性が高く、主鎖同士が水素結合することでゲル化します。
また、pHを下げることで、水素結合性が上昇し、より強固な熱不可逆ゲルを形成します。
また、アミド基ペクチンは、少ないカルシウムでもゲル化することが可能であり、高いゲル強度を示します。