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食品添加物のカルボキシメチルセルロース(CMC)について
みなさん、食品添加物に用いられているカルボキシメチルセルロースについてご存知ですか?
カルボキシメチルセルロースは増粘多糖類の一種で、食品添加物として増粘剤やゲル化剤、糊料として使用されています。
カルボキシメチルセルロースは、英語でcarboxymethyl celluloseということから、略してCMCと称されることもあります。
本ページでは、カルボキシメチルセルロースについてまとめてみました。
カルボキシメチルセルロースの構造
カルボキシメチルセルロースはグルコースがβ1,4結合して形成されるセルロースの水酸基部分が一部カルボキシメチル基(-CH2COO-)に置換されている構造です。
カルボキシメチルセルロースは、セルロースに比べ水酸基の数が少ないことから、水酸基同士の水素結合を阻害することでセルロースに比べ結晶性が低い構造となります。
また、カルボキシメチル基は親水性ですので、カルボキシメチルセルロースはセルロースに比べより親水的であることから、水に溶解する性質を有します。
カルボキシメチルセルロースは、セルロース骨格部分の分子量とカルボキシメチル基の置換度によって性質が決まり、各社から様々なグレードのカルボキシメチルセルロースが販売されています。
販売されているものは、アルカリで処理することで官能基部分をナトリウムフォームにしている場合がほとんどです。
カルボキシメチルセルロースナトリウムの構造
カルボキシメチルセルロースの製造方法
カルボキシメチルセルロースは、セルロースにモノクロロ酢酸等の試薬を反応させることで、カルボキシメチル基を付与して製造します。
具体的な方法としては、セルロース純度の高いパルプ等から粉砕、アルカリ処理等によって、セルロース質原料を得ます。その後、アルカリ条件下にてセルロースと試薬を反応させ、カルボキシメチルセルロースを製造します。
反応の際には、セルロースの分散性、あるいは塩基及び試薬との混合性を改善する目的で、有機溶剤の存在下で反応を行う場合もあります。
また、その場合出来るだけ均一に混合が可能である装置を用いることが好ましく、樹脂等を混錬するニーダーや、スラリー状にして反応させるタンクのようなものが用いられていると推定されます。
カルボキシメチルセルロースの利用と特性
カルボキシメチルセルロースは食品分野で主に増粘剤、糊料、乳化安定剤あるいは分散安定剤として使用されています。
また、カルボキシメチルセルロースはアニオン性(-の電荷を持っている)ため、金属イオンや塩の影響を受けやすい特徴があります。特に置換度が低い、即ちカルボキシメチル基が少ないものは影響を受けやすいです。
カルボキシメチルセルロースは、金属イオンと反応してゲル化することも知られており、この金属イオンとの反応性を利用して、ゲル化剤としても使用することができます。
分散安定剤としての具体的な利用例としては、乳酸菌飲料、フルーツ入り乳飲料等の乳含有飲料の製造において、
乳蛋白を安定化させる目的で使用されています。
カルボキシメチルセルロースはアニオン性であるため、電荷による反発で乳タンパク質を安定化することができます。
同じアニオン性の多糖類であるペクチンやアルギン酸も用いられますが、それらに比べカルボキシメチルセルロースは多糖類独特のベタツキや糊感が少なく、喉越しをすっきりさせることが可能であるとされています。
カルボキシメチルセルロースはアイスクリームにも用いられ、カルボキシメチルセルロースは乳化安定性を有していることから、アイスクリームに混ぜられた空気の泡や脂肪の粒子を安定化し、独特の組織とソフトな口当たりを発現させることが可能です。
また包装容器などに使われる可食性フィルムにも、カルボキシメチルセルロースは用いられ、造膜性に優れ強く柔軟なフィルムを形成します。
食品分野以外では、適度な粘度を与え研磨剤や有効成分などを分離させないようにする目的で歯磨き剤に使用されたり、主に増粘目的で、衣類用洗剤 、各種バインダー 、土木用添加剤 、スキンケア、ボディーケア など、様々な分野で用いられています。
カルボキシメチルセルロースの安全性
カルボキシメチルセルロースの安全性についてですが、原料のセルロースはブドウ糖が重合したものであり、また食経験が十分にあるため安全性が極めて高いものといえます。
カルボキシメチルセルロースは、セルロースを化学的に処理していますが、ADI(一日摂取許容量)がないことから、安全性は十分に担保されていると考えられます。
まとめ
カルボキシメチルセルロースについて纏めますと以下の通りです。
・セルロースの水酸基部分が一部カルボキシメチル基(-CH2COO-)に置換されている構造
・セルロース骨格部分の分子量とカルボキシメチル基の置換度によって性質が異なる
・食品分野で主に増粘剤、糊料、乳化安定剤あるいは分散安定剤として使用されている
・ADIがなく食経験が十分にあるため、比較的安全な食品添加物であると考えられる