乳化性を持つ多糖類のアラビアガムをご存知ですか?
アラビアガムは、アラビアゴムあるいはアカシア樹脂とも呼ばれ、優れた乳化性やフィルム特性を活かして様々な分野で利用されています。
また、ガムシロップの「ガム」とは、このアラビアガムが添加されて製造されたことにちなんで付けられた名称とも言われています。
本記事では、アラビアガムの特性や構造について記載しました。
アラビアガムとは
アラビアガムとは、アフリカのナイル地方原産のマメ科アカシア属のアラビアゴムノキ、またはその同属近縁植物の樹皮の傷口からの分泌物を乾燥させたものです。
アラビアガムの生産は主にスーダンで行われているため、スーダンでの民族紛争などによって供給が安定しないことがある素材とされています。
アラビアガムの構造としては、主鎖はガラクトースであり、側鎖がガラクトース、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸から成ります。
詳しい構造については、地域によって異なるとされていますが、アラビアガムを詳細分析すると、アラビノガラクタンとタンパク質が結合したアラビノガラクタンプロテイン、アラビノガラクタン、タンパク質のグリコプロテインから構成されています。
アラビアガムの特性
アラビアガムには様々な特性があり、以下に代表的な特性を記載します。
乳化性
アラビアガムの最大の特性は優れた乳化性です。
これは、上述したアラビノガラクタンプロテインによるものとされており、疎水性の高いタンパク質部分が油滴表面に吸着する一方で,親水性の糖鎖部分が立体障害となることで、油滴の凝集・合一を防止することで乳化性を示しているとされています。
粘度特性
アラビアガムは水に溶解しやすく、他の高分子多糖類と比較して低粘度の溶液となります。
これは、アラビアガムが分岐構造が多く、コンパクトな分子構造をしているため、分子同士の絡まりが少ないからと考えられています。
よって、アラビアガムは高濃度水溶液を調整することが可能です。
フィルム形成能
アラビアガムはフィルム形成能に優れています。菓子等の糖衣コーティング等のコーティング分野に利用されています。
アラビアガムの安全性
アラビアガムは、基本的に安全ですが、タンパク質を含むためアレルギーに注意する必要があります。
ゴムの木から取れる樹液に含まれるラテックスに対して、アレルギーを持つ方がいらっしゃいますが、現在のところ、アラビアガムとラテックスの交叉反応性は報告されていないそうです。
つまり、アラビアガムのアレルゲンとラテックスのアレルゲンはやや異なる種類である可能性が高いということです。
アラビアガムは上述の通り、タンパク質を含む場合が多いので、アラビアガムを食べて体調が悪くなる場合は、アレルギーを疑ったほうが良いかもしれません。
アラビアガムの利用方法
アラビアガムは、現在は使用されていないそうですがコーラにも使用されていました。
その理由は、コーラに使用されている色素などを沈殿しないようにする目的です。
また乳化性を生かして、乳化香料の安定化や、ビールの気泡安定化などの目的で多く飲料に使用されます。
アラビアガムはフィルム形成能に優れているため、菓子等の糖衣コーティング等のコーティング分野や、マスカラの皮膜形成剤として利用されています。
その他、水彩絵具のバインダーとして使用されています。