私たち人間には、普段ご飯等の炭水化物や糖類を食べてブドウ糖を摂取した際に、余ったブドウ糖を蓄える機能が存在します。
どのようにして蓄えるかというと、ぶどう糖を繋げてグリコーゲンと呼ばれる多糖類として体内で貯蔵し、必要な時に再び分解し、ブドウ糖としてエネルギー源として利用します。
そこで、本記事では人間の貯蔵多糖であるグリコーゲンについて解説します。
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グリコーゲンとは
グリコーゲンとは、ブドウ糖(α-D-グルコース)がグリコシド結合によってたくさん繋がった高分子です。
植物の貯蔵多糖であるデンプンと非常に似ているのですが、構造が少し異なります。
具体的には、デンプンの構成成分であるアミロペクチンと呼ばれる物質と構造が似ているのですが、アミロペクチンに対して、グリコーゲンはα-1,6結合の頻度が多いことが特徴です。
α-1,6結合というのは、ブドウ糖の結合の種類のことであり、この結合が多いとイメージとして枝分かれ構造が多い、即ち網目のような構造となっているイメージです。
グリコーゲンの合成
グリコーゲンの合成は主に肝臓と筋肉で行われます。
グリコーゲンを合成する目的は、上述した通り余ったブドウ糖を貯蔵し必要な時に使えるようにしておくためです。
グリコーゲンは、酵素反応によって合成され、非常に複雑な過程で合成されますが、主要な酵素は3つありますので、そちらをご説明します。
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ
グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼという酵素は、ウリジン三リン酸(UTP)とグルコース1リン酸からウリジン二リン酸(UDP)-グルコースを合成する酵素です。この反応では、副産物に二リン酸が生じ、二リン酸は無機ピロホスファターゼという酵素で加水分解されて2分子のリン酸となります。
グリコーゲンシンターゼ
グリコーゲンシンターゼはグリコーゲンを伸長する酵素で、UDP-グルコースからUDPを外し、その際にグリコーゲンの非還元末端グルコース残基のC4-OHが求核攻撃することで、α-1,4結合を作る酵素です。
グリコーゲン分枝酵素
グリコーゲン分岐酵素は、グルカン鎖(グルコースが繋がったもの)が11個以上になった際に、グルカン鎖の非還元末端から約7残基を切り取り、別のグルカン鎖のC6-OHに移す酵素です。
要約すると、グルコース-1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼで、UDP-グルコースを作り、グリコーゲンシンターゼでUDP-グルコースからα-1,4結合を作ることで、グルコース鎖を伸長し、グリコーゲン分岐酵素で枝分かれ構造(α-1,6結合)を作ることで、グリコーゲンが作られます。
グリコーゲンの分解
グリコーゲンの分解についても、合成と同様に肝臓と筋肉で行われます。
グリコーゲンの分解は、グリコーゲンホスホリラーゼ、ホスホグルコムターゼ、グリコーゲン脱分枝酵素というの3種類の酵素によって行われます。
グリコーゲンホスホリラーゼ
グリコーゲンの非還元末端を加リン酸分解する酵素であり、グルコース1-リン酸を生じます。
このグリコーゲンホスホリラーゼは「α-(1→4)結合」のグルコースを遊離させることが可能です。
ホスホグルコムターゼ
ホスホグルコムターゼは、グリコーゲンホスホリラーゼによって生じたグルコース1-リン酸をグルコース6-リン酸に変換する酵素です。
グルコース6-リン酸は、グルコース6-ホスファターゼによって、グルコースへと変換されエネルギーとして利用することが可能です。
グリコーゲン脱分岐酵素
グリコーゲン脱分枝酵素は「グルカノトランスフェラーゼ」活性と「アミロ-1,6-グルコシダーゼ」活性という2種類の酵素活性を持つ酵素です。
グルカノトランスフェラーゼは、枝分かれしている4つのグルコースからなるグルコース鎖のうち、3残基分のグルコースを切り出して主鎖の非還元末端に移します。
アミロ-1,6-グルコシダーゼは、分岐点に残った残りの1残基のグルコースを加水分解してグルコースを遊離させます。
肝臓と筋肉での挙動
肝臓と筋肉でグリコーゲンは合成されますが、実はその挙動が異なります。
肝臓にある肝細胞では、食後直後に肝臓の重量の8 %(大人で100-120 g)までのグリコーゲンを蓄えることができます。
そして、ここが重要なのですが肝臓に蓄えられたグリコーゲンのみが他の臓器でも利用することができるのです。
一方、筋肉である骨格筋中ではグリコーゲンは骨格筋重量の1-2 %程度の低い濃度でしか貯蔵できません。
筋肉は、体重比で成人男性の42%、同女性の36%を占めるため、大人で300g前後のグリコーゲンを蓄えることができます。
グリコーゲンローディング
グリコーゲンローディングは別名カーボローディングとも言われ、炭水化物や糖質などを摂取し、グリコーゲンをより多く体の中に蓄えておくことです。
主な目的は、スポーツでのパフォーマンス向上で、グリコーゲンを蓄えておくことで長距離走等で必要な持続力が向上するとされています。
方法としては、目的とする試合の4~6日前までは、低糖質食を食べておきます。
そうすることで、筋肉中のグリコーゲンが枯渇し、糖質を欲した状態となります。
そして、試合の3日前くらいから、高糖質食に切り替えます。
そうすることで、肝臓と筋肉中にグリコーゲンが以前より多く貯蔵され、持久系の運動にいい影響を与えてくれるそうです。