増粘剤、糊料 食品添加物

食品添加物の加工でん粉について

更新日:

食品添加物の加工でん粉について

食品添加物の加工でん粉は増粘剤や糊料あるいは物性改良を目的として、様々な食品に用いられています。

本ページでは、加工でん粉の種類や用途について纏めてみました。

加工でん粉とは

加工でん粉とは、植物が太陽エネルギー、水、二酸化炭素から作り出す炭水化物(多糖)であるでん粉を、物理的あるいは化学的処理によって加工したものです。

日本で食品添加物に指定されている加工でん粉は、でん粉の水酸基(OH基)を別の官能基に置換し化学処理によって誘導体化したものです。

物理的処理には、加熱や酵素処理などがありますが、これらの加工のみでは、日本においては食品添加物とならず、通常の「でん粉」という表示になり、原材料表示で書かれている「加工でん粉」には該当しません。

加工でん粉の種類

日本で食品添加物に指定されている加工でん粉は12種類あり、下記の表のとおりです。

物質名
アセチル化リン酸架橋デンプン
アセチル化酸化デンプン
アセチル化アジピン酸架橋デンプン
オクテニルコハク酸デンプンナトリウム
酢酸デンプン
酸化デンプン
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン
ヒドロキシプロピルデンプン
リン酸化デンプン
リン酸架橋デンプン
リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン
デンプングリコール酸ナトリウム

 
簡単に名前の意味を説明しますと、「アセチル化」あるいは「酢酸」という表記が物質名に含まれているでん粉は、でん粉のOH基の部分が一部CH3というアセチル基に置換されていることを特徴とします。

「リン酸架橋」という表記が物質名に含まれているでん粉は、でん粉のOH基の部分が二ヵ所リン酸と結合することで、架橋構造を持っていることを特徴とします。

「酸化」という表記が物質名に含まれているでん粉は、酸化剤によって、でん粉が低分子化しており、またOH基の部分が、カルボキシル基(COOH)またはカルボニル基(COH)に置換されていることを特徴とします。

「アジピン酸架橋」という表記が物質名に含まれているでん粉は、でん粉のOH基の部分が二ヵ所アジピン酸と結合することで、架橋構造を持っていることを特徴とします。

オクテニルコハク酸デンプンナトリウムは、でん粉のOH基の部分が一部オクテニルコハク酸基に置換されていることを特徴とします。

「ヒドロキシプロピル」という表記が物質名に含まれているでん粉は、でん粉のOH基の部分が一部ヒドロキシプロピル基に置換されていることを特徴とします。

リン酸化デンプンは、でん粉のOH基の部分が一部リン酸基に置換されていることを特徴とします。

リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉は、でん粉のOH基の部分が一部リン酸基に置換されており、さらにリン酸による架橋構造を持っていることを特徴とします。

デンプングリコール酸ナトリウムは、でん粉のOH基の部分が一部カルボキシメチル基に置換されていることを特徴とします。

加工でん粉の用途

加工でん粉には様々な用途があり、私たちが口にする様々な食品に含まれております。
代表的な食品での用途とその利用のメカニズムについて御説明いたします。

・水畜産練り製品への利用
水畜産練り製品とは、かまぼこやソーセージなどの練り製品のことであり、練り製品には加工でん粉が入っていることがあります。

練り製品はタンパク質のネットワーク構造(ゲル)によってできていますので、その構造を補強する目的(ネットワーク構造の隙間を埋める)で用いられます。

でん粉は老化という現象によって、吸水した水を離水してしまうことから、練り製品から水が出ることを防止する目的で、アセチル化でん粉やヒドロキシプロピルでん粉が用いられます。

また、ネットワーク構造の補強には、でん粉がどれだけ膨らむかが重要ですので、架橋でん粉も用いられます。

・麺類
麺類は小麦粉で作られていますが、小麦粉のでん粉は老化しやすく麺の品質が変化しやすい特徴があります。

よって、品質の劣化を防ぐため、老化耐性を持つアセチル化でん粉やヒドロキシプロピルでん粉が用いられます。

また、麺の食感は、でん粉の膨らみ方によって変わりますので、こしを出したいときや柔らかくしたいときにも用いられます。

こしを出す場合は架橋でん粉が用いられます。

また、麺類を作る際に、麺同士が付着することを防止する目的で打ち粉として使用され、その場合は流動性の高い酸化でん粉が用いられます。

・たれ、ソース
たれ、ソースには粘度付与の目的で様々な増粘剤や糊料が用いられますが、加工でん粉も用いられています。

たれやソースは経時的に離水してしまうと問題ですので、離水防止を目的としてアセチル化でん粉やヒドロキシプロピルでん粉が用いられます。

また、タレやソースは加熱の際に粘度が変わってしまうと困ること、および粘度はでん粉の膨らみ具合で調整することから、架橋でん粉も用いられます。

架橋でん粉は加熱やシェアを受けても粘度が変化しにくい特徴があります。

・ベーカリー
ベーカリーは、主に小麦粉が使用されますが、麺類のところでも述べたように小麦粉のでん粉は老化しやすく、ベーカリー食品の食感が経時的に変化してしまいます。

そこで、品質の劣化を防ぐため、老化耐性を持つアセチル化でん粉やヒドロキシプロピルでん粉が用いられます。

また、食感を改良することを目的にも用いられ、ヒドロキシプロピルでん粉は保水力が高いため、もちもちとした食感を付与することができます。

・フライ食品
フライ食品も、主に小麦粉が用いられますが、場合によっては加工でん粉が用いられます。

食感改良目的で、架橋でん粉や酸化でん粉が用いられます。

これは、あまり膨らまない上記でん粉を用いることで、フライ衣のフライ中の水抜けをよくし、サクサクとした食感を付与することができます。

・ドレッシング
ドレッシングには、加工でん粉は増粘剤として用いられる他に、乳化剤用途で用いられる場合もあります。

乳化剤用途としては、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムが用いられ、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムはでん粉がもつ親水性(OH基)と疎水的なオクテニルコハク酸基によって、両親媒性となり乳化効果を持ちます。

加工でん粉の表示

加工でん粉の表示についてですが、下記のようなルールがあります。
・原則としては、物質名を表示する。例:酢酸でん粉、酸化でん粉
・簡略名としての表示も可能である。例:「加工でんぷん」、「加工でん粉」、「加工澱粉」、「加工デンプン」
・増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊料の用途で使用した場合は、用途名併記が必要。
・乳化剤の用途で使用した場合は、「乳化剤」という一括名での表示も可能。
※上記の用途でない場合は、加工でん粉のみ表示されている場合もあります。

ブログランキング

-増粘剤、糊料, 食品添加物

Copyright© 食品添加物と健康食品の真実 , 2024 All Rights Reserved.