イミダゾールジペプチドの効果と含有される食品
最近、テレビ等でも取り上げられ始め、疲労回復成分として注目されている「イミダゾールジペプチド」についてご存知でしょうか?
本記事ではイミダゾールジペプチドの特徴や効能について纏めてみました。
イミダゾールジペプチドとは
イミダゾールジペプチドとは、ペプチドというタンパク質の分解物の一種であり、タンパク質の構成成分であるアミノ酸がつながった化合物の一種です。
具体的には、ヒスチジンと呼ばれるアミノ酸が含まれるジペプチド(アミノ酸が二つくっついたもの)の総称です。
イミダゾールというのは、ヒスチジンに含まれる構造の名前であり、ある特定の位置(1位と3位)に窒素原子がある芳香族化合物のことをいいます。
イミダゾールジペプチドは何種類か知られており、ヒスチジンとβ-アラニンが結合したジペプチドであるカルノシン、メチル化されたヒスチジンとβアラニンが結合したジペプチドであるアンセリン、メチル化されたヒスチジンとβアラニンが結合したジペプチドであるバレニン、ヒスチジンとγ-アミノ酪酸(GABA)が結合したジペプチドであるホモカルノシン等があります。
イミダゾールジペプチド(カルノシン)の構造
イミダゾールジペプチドは鳥類の翼の付け根に豊富に含まれていることが知られており、渡り鳥が非常に長い距離を移動できるのは、このイミダゾールペプチドが筋肉の疲労を回復するためであるとされており、そういった背景から人間に対してもイミダゾールジペプチドは疲労回復に非常に効果があるとされ最近注目されています。
大阪市立大学の研究チームの研究結果により、イミダゾールジペプチドには抗疲労効果があることが証明されています。
実験内容は、イミダゾールジペプチドを4週間毎日投与後、4時間の自転車こぎ運動を行い、日常生活で起こる肉体疲労の負荷をかけたそうです。
その結果、イミダゾールジペプチドを与えていない群は、与えた群と比較して、実験終了直後の疲労感は、約1.5倍、実験終了4時間後には約2倍の差が出たそうです。
この結果によって、疲労予防のみならず、疲労回復力を高める効果があることが証明されました。
また、ペプチドは通常体内でプロテアーゼ系の消化酵素等によって分解されることがありますが、ヒトの場合、脳細胞、筋肉などの消耗の著しい部位に、イミダゾールジペプチド合成酵素が豊富に存在するため、元となるアミノ酸が存在すれば、酸素消費が多く発生する部位で、イミダゾールジペプチドが再合成されやすく、効果が発現しやすいことがわかっています。
つまり、イミダゾールジペプチドを経口摂取しておけば、体内で一度分解されても再び合成されやすく効果があるとされています。
抗疲労効果のメカニズム
私たちは体を動かしたりする際に、エネルギーを消費します。
そのため、私たちの体の中では常にエネルギーを作っており、このエネルギーを作るために私たちは食事をしているといっても過言ではありません。
しかし、実は私たちの体の中では活性酸素とよばれる酸素の一種が発生し、その酸化ストレスによってエネルギーの生産を阻害されてしまいます。
活性酸素が発生する原因は様々ですが、疲労している感覚は、酸化ストレスによってエネルギーの生産量が不足したために感じるものだそうです。
疲れの元である活性酸素を除去することで、疲れをとる、または疲れにくい体にすることが出来ますが、この活性酸素を除去するものに抗酸化物質があります。
そして、イミダゾールジペプチドは最も効果的な抗疲労効果をもつ抗酸化物質であると言われています。
イミダゾールジペプチドには優れた抗酸化作用があり、活性酸素による酸化ストレスから引き起こされる疲労を軽くする効果があると報告されています。
また、これまでは肉体的な疲労について述べてきましたが、イミダゾールジペプチドにはなんと精神的な疲労も回復する効果があるとされています。
精神的な疲労も、精神的なストレス等によって発生した活性酸素によるものが原因とされており、特に脳は、エネルギーの消費量が多いため、活性酸素が発生しやすいとされています。
このとき発生した活性酸素が脳細胞のエネルギー産生を抑制してしまい、疲労感やだるさを感じてしまったり、神経伝達物質の働きの悪化を引き起こしたり、ひどい場合はうつ病の原因の一端にもなります。
イミダゾールジペプチドは抗酸化作用が優れていることから、上述の精神的な疲労にも効果があり、ある研究結果によると、イミダゾールジペプチドの抗酸化作用が脳の萎縮を抑え、認知機能を改善することが確認されたそうです。
そのため認知症予防等への活用が期待されており、現在は応用研究がなされています。
含有される食品とおススメの食べ方
イミダゾールジペプチドは種々の動物の骨格筋に広く分布しており、牛肉や豚肉、マグロなどにも含まれていますが、日常的によく摂る食材、かつ含有量が多いものとして「鶏のむね肉」に非常に多く含有されています。
イミダゾールジペプチドは熱に強いので、加熱している料理でも大丈夫ですが、一方で水溶性成分ですので、煮汁等に溶け出てしまいます。
そのため、おススメの食べ方としては、煮汁ごと摂取が可能であるスープやカレー、シチューなどの食べ方であり、コンビニで最近増えてきているサラダチキンなどは、煮汁に成分が流出している可能性があるため、イミダゾールジペプチドを摂取する目的ではあまりお勧めできません。