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食品添加物のリン酸塩は危険?
食品添加物のリン酸塩について、最近食品メーカー各社が使用についてコメントを出したり、リン酸塩不使用の商品をラインナップしています。
なぜそのような状況になっているかというと、リン酸塩は体に害があるという説が消費者や業界内で流れているためです。
では実際、リン酸塩とは何なのか、また何のために使用されているのか、そしてリン酸塩は体に害があるのかという点について、本記事でまとめてみました。
リン酸塩とは
リン酸塩とは、リン酸イオン(PO43-)という物質と、ナトリウムやカリウム等の金属イオンからなる化合物のことです。
食品添加物として使用されているリン酸塩は大別すると、オルトリン酸塩と重合リン酸塩の2種類が存在します。
オルトリン酸塩
一般的にリン酸(H3PO4)を基本としたリン酸塩をオルトリン酸塩といい、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三カルシウムなどがあります。
別名を、正リン酸塩ともいいます。
重合リン酸塩
重合リン酸塩とは、オルトリン酸(H3PO4)を加熱することで脱水反応が起こり、無機高分子となった物の総称です。
縮合リン酸塩ともいいます。
ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩などが重合リン酸塩です。
リン酸塩が危険と言われる理由
リン酸塩は、さまざまな食品に使用されていることから、食品を摂取する上で日常的に摂取している食品添加物となります。
そのため、リン酸塩を日常的に摂取することは避けられないため、その毒性や身体に与える影響を知っておくことが重要です。
下記にリン酸塩を過剰摂取した場合の推定されるリスクを記載します。
骨粗しょう症や骨の発育阻害
オルトリン酸塩は、骨に含まれているカルシウムと結合してリン酸カルシウムを形成することでカルシウムを排出し、カルシウムの吸収を妨げる可能性があります。
また、骨の代謝の低下や血液中のカルシウム濃度を低下させる働きもあることも知られています。
上記のようなことが生じることで、カルシウムとのバランスが乱れ、子供の発育を阻害する可能性があります。
腎臓疾患
重合リン酸塩は、腎臓に悪影響を与えることが知られています。
具体的には、腎臓の石灰化などの腎臓疾患を引き起こす原因になるとされています。
ミネラルの排出
重合リン酸塩は、ミネラルと結合するため、吸収出来ず排出される際に、ミネラルに結合してミネラルも排出してしまいます。
これにより、本来は体内で吸収されるはずのミネラルが吸収されず、ミネラル不足になる可能性があります。
リン酸塩の食品表示について
リン酸塩の使用用途としては、畜肉製品の結着剤、乳製品類の乳化剤、酸味料及びpH調整剤での利用が多いです。
これらの4つの使用用途は、食品の原材料名表記に用途のみを記載する一括表示が認められているため、リン酸塩は多くの加工食品に使われていると推定されますが、具体的に使用している製品を判別することは難しいといった課題があります。
リン酸塩の用途
リン酸塩の使用用途は、結着剤、乳化剤、酸味料あるいはpH調整剤と上述しましたが、具体的には下記のような用途で使用されています。
金属イオンの封鎖作用によって、ビタミンCの安定化、天然色素や合成着色料の退色や変色防止、金属イオン臭と味の除去などに利用されます。
乳製品のカゼインのイオン交換に作用して、乳製品の乳化安定化に寄与します。
たんぱく質や高分子物質に作用して、水との親和性や保水性を高め、畜肉製品をジューシーなものにすることが出来ます。
pHを調製することが可能であり、またpHの変化を抑える緩衝効果があり、風味の向上に使われます。
リン酸塩の入っている食品
リン酸塩が入っている各種食品とリン酸塩の役割をまとめました。
ジュース類:変色、変質防止、味のコク出し、フレーバーの保持、ビタミンCの安定化
炭酸飲料:炭酸ガスの安定化、ビタミンCの分解防止
缶詰め:缶臭防止、缶の腐食防止、風味の向上、pH調整、鉄イオンによる黒変防止、果汁の混濁沈殿防止
醤油:褐変化防止、味の調和、カビの防止、塩なれ効果、pH調整
味噌:褐変化防止、塩なれ、豆の軟化、乾燥防止、pH調整、味の調和
佃煮類:味の調和、老化防止、艶の向上、変色変質防止、pH調整、保存性・保水性の向上、漂白の戻り防止、タンニンによる黒変防止
ソース:味の調和、塩なれ
餡類: 保存延長、てりの向上、もどり防止、色素安定化、pH調整
食酢:味の調和
漬物類:味の調和、アク抜き、艶出し、低塩化漬物の変色、変質防止、pH調整
アイスクリーム:固さの調整、気泡の保持
コーヒー原料:着色度、抽出液量の増加
清酒:風味の向上
畜肉:結着力増大、歩留まり向上、変色・変質防止、保水性向上、ねとつき防止
めん類:外観の向上、食味の向上、ゆで汁のにごり減少、ゆで麺歩留まりの向上
チーズ:乳化安定化
結局安全か?
リン酸塩の過剰摂取が懸念されるのは、様々な加工食品に含まれるため、普段の食事で意図せずリン酸塩の過剰摂取となるということです。
実はリン自体は体に必要なミネラルですが、過剰摂取は上述したような健康被害が考えられます。
厚生労働省が策定する基準では、リンの「耐容上限量」を1日当たり3000 mgであり、この値を超えて摂取した場合、健康被害が発生する可能性があります。
しかし実は、リンは普通の食品、即ち動植物食品にも広く含まれています。
豆類、魚類は特に多く含みリ、可食部100 gに対して、するめ1100 mg、脱脂粉乳1000 mgなど多く含まれているものがあります。
ちなみに、日本人の食事摂取基準でリンの目安量は、成人男性で1000mg/日、成人女性で800mg/日ですが、2015年国民健康・栄養調査のリン摂取量は男性で平均1063mg、女性で925mgと、目安量を上回っています。
一方、食品中のリン酸塩からのリンの摂取はどのくらいかといいますと、厚生労働省の摂取量調査結果によると、総リン酸塩類のリンとしての一日摂取量は、265.6 mgです。
この量は、食品由来のリンの平均摂取量(男性1063mg、女性で925mg)よりも少なく、耐容上限量の3000mg/日とはほど遠い値です。
リン摂取量の内訳は、重合リン酸塩が15.2mg/日、オルトリン酸が250.4mg/日となっています。
オルトリン酸の量が多いのは、オルトリン酸は天然由来の成分として食品にも含まれており食品の食品由来と食品添加物由来の量をあわせた数値であるからです。
重合リン酸は天然に存在しないので食品添加物由来の量です。
これらの結果に加え、ある程度の過剰量のリンは尿で排出されることもあり、普通に食事をしている分にはリン酸塩の摂取に危険性はないと考えられます。
まとめ
食品添加物のリン酸塩は、極端に偏った食事をとらない限り、摂取による危険性は少ないと感じます。
どうしても心配な方は、リン酸塩不使用製品などが販売されていますので、そちらを購入するのもよいかと思います。