寒天はゼリーや和菓子等のゲル化剤として良く用いられていますが、その性質や原料等についてご存知でしょうか。
本記事では、寒天の基本的な情報や性質について纏めてみました。
Contents
寒天とは
寒天は、テングサ(天草)、オゴノリなどの紅藻類の粘液質を凍結・乾燥したものです。
英語でagarといいますが、日本語でも寒天のことをアガーと呼ぶ場合もあります。
寒天は食品分野で良く使用され、その理由としては1%以下の濃度でも水溶液をゲルにすることが可能な強いゲル化力が利用されています。
寒天の製造方法
寒天の製造方法は、成分の抽出、濾過、凝固、脱水、粉砕という処理を経て作られます。
寒天成分の抽出
抽出方法は、原料によって少し異なり、テングサが原料の場合、塩素系漂白剤で漂白したのち、煮沸抽出する方法で行われます。
一方、オゴノリが原料の場合、テングサ寒天並みにゲル強度を高めるため、水酸化ナトリウム溶液でアルカリ処理した後、塩素系漂白剤で漂白して煮沸抽出します。
また、無添加といわれる寒天においては、抽出時に塩素系漂白剤を使用しておらず、市場にも一定数そういった寒天が存在します。
濾過
抽出した成分中に含まれる不溶物を取り除くために珪藻土を加えて加圧濾過します。
凝固
浅いプールのようなところに濾過したものを注入して放置し、冷ますことで凝固物を得ます。
脱水
テングサが原料の場合、凝固物を凍結乾燥法で脱水し、さらに熱風乾燥機で水分10%まで乾燥させます。
一方オゴノリが原料の場合、油圧器により凝固物を加圧することで脱水し、テングサの方法と同様に熱風乾燥機で乾燥させます。
粉砕
脱水後に得られたものを粉砕機で小さく粉砕することで粉末寒天を製造しています。
寒天の成分
寒天の成分の大部分は食物繊維(アガロースやアガロペクチンなどの多糖類)からできており、ヒトの消化酵素のみでは分解されない性質を有します。
ただし、寒天に含まれる多糖類の一部は、胃の中の胃酸によって分解しアガロオリゴ糖となりそれが体内に吸収され、生理的な作用をもつことが近年研究されています。
寒天の特徴的な性質である凝固作用は多糖類に由来します。
ゲル化剤としてよく使用されるゼラチンは、タンパク質であるため、パイナップルやキウイフルーツなどの果物に含まれるプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)によって凝固が阻害されてしまいます。
しかし、寒天は多糖類によってゲル化するため、ゼラチン(タンパク質)では凝固できない食材のゲル化剤として利用されています。
アガロース
アガロースは寒天(agar)から硫酸エステルを有するアガロペクチン(agaropectin)を除去して精製したもので,優れたゲルを形成する性質を有しますが,寒天原料の海藻種,精製法により,硫酸エステル,ピルビン酸残基,メチルエーテルの残存量が異なり,目的に応じて適切な製品を選択する必要があります。
アガロペクチン
アガロペクチンは寒天成分中のアガロース以外のイオン性の多糖類のことを指します。
その構造はアガロースと同じ結合形式をしていますが、部分的に硫酸エステル、メトキシル基、ピルビン酸基、カルボキシル基を含んでいます。
寒天の性質
寒天には上述したゲル化する性質以外にも様々な性質を有しています。
以下に、寒天を使用する際に重要な性質について記載しました。
溶解性
寒天は水にしにくく、沸騰水浴中で溶解させることがほとんどです。
その理由として、寒天は構造が非常に強固であることから、溶かすには非常に大きなエネルギーが必要であるからです。
ゲル化
寒天を溶解させ、冷却することでゲル化します。
水に溶けている状態の際は、ランダムコイルの状態で存在するのに対して、冷却することでダブルへリックス構造となり、それがネットワークを形成してゲル化します。
離水
寒天のゲルはゼラチン等で作成したゲルと比較して離水が多いのが特長です。
離水が多いということは短所にとらえられがちですが、みずみずしく味を感じやすいという長所であるともいえます。
そのため、ゲル性を有する和菓子等に利用されることがあります。
分子量
寒天の平均分子量は原料である海藻の種類や抽出条件によって異なりますが、一般的に数万~数十万と言われています。