食品のパッケージなどによく「遺伝子組み換えでない」などの表示を見かけますよね?
実際、遺伝子組換え作物使用食品を敬遠する方も多いと思いますが、遺伝子組換えとは何かご存知でしょうか?
本ページでは、そんな疑問に答えるべく、遺伝子組換え食品についてまとめてみました。
遺伝子組換えとは
遺伝子組換えとは、生物の細胞から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、植物などの細胞の遺伝子に組み込み、新しい性質をもたせることです。
具体的には、私たち人間も含め生物はDNAを保有しており、DNAは塩基と呼ばれる物質で構成されています。
実はこの塩基の並び方によって、DNAには様々な遺伝情報が保存されています。
ある一定の遺伝情報を保有している塩基配列の部分を遺伝子と呼んでおり、生物は遺伝子から遺伝情報を読み取って様々なタンパク質を作ることで生体を構成しています。
この塩基情報を保有している遺伝子は、科学技術によって生物から取り出し複製したりすることができます。
また、取り出した遺伝子を別の生物のDNAに組み込むことも科学技術によって可能であり、それによって新しい性質(例えば、作物が大きくなる性質等)を付与することを遺伝子組換えといいます。
ではなぜ遺伝子組換えの作物を作る目的はなんでしょうか?
答えは実に簡単であり、除草剤耐性、病害虫耐性、貯蔵性増大などの生産者や流通業者にとっての利点のある性質を持たせたり、食物の成分を改変することによって栄養価を高めたり、有害物質を減少させたりし消費者にとっての利点を持たせたりするためです。
遺伝子組換え生物を英語でgenetically modified organism ということから、遺伝子組換え作物のことをGM作物、GMOということもあります。
ただし、GMOは遺伝子組換え生物を指すため、作物に限らず遺伝子組換えが行われた生物全てを指します。
遺伝子組換え食品の種類
では遺伝子組換え食品は実際どのようなものがあるのでしょうか?
日本で安全性が確認され、販売・流通が認められているのは、食品8作物(169品種)、添加物7種類(15品目)です。(2012年3月)
遺伝子組換えが認められている作物と特徴
作物 | 性質 |
---|---|
大豆 | 除草剤耐性、高オレイン酸 |
じゃがいも | 害虫耐性、ウイルス耐性 |
菜種 | 除草剤耐性 |
とうもろこし | 害虫耐性、除草剤耐性 |
わた | 害虫耐性、除草剤耐性 |
てんさい | 除草剤耐性 |
アルファルファ | 除草剤耐性 |
パパイヤ | ウイルス耐性 |
遺伝子組換えが認められている添加物と特徴
添加物 | 特徴 |
---|---|
キモシン | 天然添加物の代替 |
α-アミラーゼ | 生産性の向上 |
リパーゼ | 生産性の向上 |
プルラナーゼ | 生産性の向上 |
リボフラビン | 生産性の向上 |
グルコアミラーゼ | 生産性の向上 |
α-グルコシルトランスフェラーゼ | 生産性の向上 |
基本的には、作物については収穫量を上げるためのものがほとんどです。
添加物はほとんどが酵素であり、遺伝子組換えの微生物を用いることで、酵素の生産性を向上させています。
酵素の中でもキモシンは、チーズの製造に用いられますが、天然のキモシンは子牛の胃からしか取得できず安定供給が困難ということで、微生物を使って生産した遺伝子組換え品の流通が認められています。
リボフラビンはビタミンですが、製造の際に遺伝子組換えの微生物を用いて製造してます。
遺伝子組換え作物の主な用途については下記のとおりです。
とうもろこし:飼料用、スターチ用(異性化糖、水飴)、グリッツ用
大豆:製油用、飼料用、豆腐、油揚、納豆、みそ、しょうゆ
なたね:製油用
わた:製油用
パパイヤ:食品用
遺伝子組換え食品の安全性
遺伝子組換え食品と聞いて、消費者が最も懸念するのは安全性だと思います。
安全性については、厚生労働省を中心に国の機関が安全性を評価し、問題がない場合に認可しています。
安全性の評価ポイントの礼としては以下のようなものです。
・組み込む前の作物(既存の食品)、組み込む遺伝子、などはよく解明されたものか、人が食べた経験はあるか。
・組み込まれた遺伝子はどのように働くか。
・組み込んだ遺伝子からできるタンパク質はヒトに有害でないか、アレルギーを起こさないか。
・組み込まれた遺伝子が間接的に作用し、有害物質などを作る可能性はないか。
・食品中の栄養素などが大きく変わらないか。
上記のものを含め、様々な項目について科学的なデータを基に評価し、総合的に判断しています。
必要に応じて動物を使った毒性試験や、新たな科学的な知見が生じた場合は再評価を行っています。
厚生労働省から発信されている安全性に関する報告書は下記リンクで閲覧可能です。
安全性評価に関する報告書
また、遺伝子組換えによってできるタンパク質にアレルギー性がないことも同時に評価しています。
具体的には、下記のようなことを中心に評価しています。
・胃や腸できちんと消化されるか。
・熱に弱いか(加熱処理で分解されるか)。
・既に知られているアレルゲン(アレルギーの原因物質)と似ていないか。
・その食品の主要なタンパク質にはならないか。
アレルギーについては下記ページに詳細を記載していますので、ご確認ください。
アレルギーについて
上記の項目について、きっちり国が評価しているため、食品科学者の私の意見としては、遺伝子組換え食品は安全であると考えております。
まとめ
遺伝子組換え食品について纏めてみましたがいかがでしょうか?
今後は世界的な人口増加に伴って、食料不足の問題が顕著になると考えられます。
そういったときに、遺伝子組換えによって単位面積当たりの収穫量を増加させることは、食糧問題を解決するうえで重要となるため、今後は遺伝子組換え食品がどんどん増えていくと考えられます。
私達消費者は正しい知識を持って、遺伝子組換え食品について理解し利用していかなければならないと思います。